(青春47話参照) 「あたし、越前くんのことが好きです!付き合ってください」 あたしなりに、精いっぱいの告白だった。告白なんて、めったにするもんじゃない。いつも喧嘩ばっかりの越前くん相手にさえ、正直どきどきした。結構勢いなところもあったけど、言った後はすごくどきどきしたし、そのまま逃げたい気持ちにもなった。 「……………上原…」 「……………………」 「悪いけど俺、テニスが恋人だから無理」 「あああああああああ」 まさに叫びながら、ドラマのワンシーンようにあたしは飛び起きた。恐ろしい夢だった、若干現実を含めた、おぞましい夢だった。あの日のことを鮮明に思い出させるかのような出来事だった。あの時は一秒も経たずに「無理」って言われて速攻フラれて凹んだ。いまだに引きずっているところもある。 別に越前くんに告白したことを悔いてるわけじゃないんだけど、悔いているのは脈があるのかも分からずに告白したあたしさ。結局は後悔していることになるんですが! しかし、最後の越前くんの言葉は、妙にリアリティがあってそっちのほうが言われてもおかしくない言葉だったと思う。テニスが恋人って…あながち無いことは無いよ彼の場合。 それにしても目覚めの悪い夢だったな…。あの日の告白は、断られてからが地獄のはじまりだったというのに。地獄の門の入り口に立った瞬間に終わったから余計に怖い…。あの日、あの後はバス代を借りて終始無言のまま帰ったっけなあ…。ああ…あれは本当に拷問に等しかった。 拷問といえば、学校へ行くなり越前くんと靴箱でばったり会うということですね 「…………」 「…………なに、その変な顔」 「いや…べつに……」 人の顔見て嫌な顔するとか失礼でしょって越前くんに怒られた。まあ、ごもっともだ。それがまたむかつくんだけど! 「越前くんが夢に出てきただけですう」 「へえ、どんなだったの?」 「相変わらず生意気だった!思い出しただけでいらいらするわー」 「あっそ。どーせあんたも夢の中で怒ってたんでしょ?」 「怒る前に起きたから今怒る!」 「八つ当たりしないでくれる?」 あたしは今も越前くんと喧嘩する毎日だ。だけど、今は、この関係のままでもいいやって思ってる自分がどこかにいる気がする。 「…今度はなににやけてんの。キモチワルイ」 「んな!にやけてなんかない!」 「怒ったりにやけたり、変な奴」 「いっつも無表情な越前くんに言われたくないね!」 2012/07/06 奈沙さん、この度は青春リクエストにご参加くださりありがとうございます。奈沙さんはこれまで何度も企画に参加してくださっていて毎回うれしいです!ありがとうございます。主人公の馬鹿さはこれからも健在で、時にシリアスも含めて、がんばっていきたいと思います。今回はありがとうございました。 |