seisyun | ナノ


うちのお母さんは人使いが荒い。部活がなくて部屋でゆっくりしていたら、買い物を頼んでもいい?とやってきて、あたしの承諾を聞かずに強制的に買い物へと行かせた。せっかくの部活休みなのに!ゆっくりしてたのに!ひどいよお母さん!どうしてこうも母親というものは、娘の予定を無視してしまうのでしょうか。

文句を言いながらもあたしは買い物を済ませた。白菜二個とか…重すぎだし多すぎでしょ。こんな量一体誰が食べるんだ…あたしか。あたし、体力はあるんだけど、腕力があんまりないからこういうの苦手なんだよね…。おっもいし…!

すると、あたしはバランスを崩し、足をかなり変な方向にひねって、盛大にこけてしまった。

「……痛い…うそでしょ…中学生にもなって…ぶっこけるとか…」

なんてことだ。あたしここまで歩いてきちゃったから、帰りも歩いて帰るしかない。しかも結構な距離歩いてきたから、ここから帰るのはちょっときついかも…。自転車で来ればよかった…!でも、まあそんなにひねった感じでもな…………………………くないですね。痛い!うそだ!あっでもこれで部活休めるね!ってそんなの嫌だ!!あたし最近部活に出るの楽しみになってたのに…!それ以前に!あたしこれで帰れるのかな…。

とりあえず帰ろうとしたあたしですが、痛い。結構痛い。しかもこの痛いのに、白菜二個とか鬼すぎる!!体重かかりすぎて足に負担かかってるし…!痛い痛い…!


「なにやってんの、あんた」


そこへいきなり、越前くんが自転車を押しながらあたしのところにやってきた。げっ、なんでこんなときに越前くんが…。足痛いの隠しておきたいな。越前くんには弱いところは見せたくないし。と、バカな見栄っ張りをして、いつも通りに話した

「越前くん、偶然だねえ〜。あれっ自転車?なにそれ借りパクしたの?通報してあげよっか」
「………あんた、いつもよりうるさいんだけど」

はっ、しまった。なんかあまりにも足の痛さを隠すあまりに早口になってしまった…。でも言いたいことは大体こんな感じだ。

それにしても越前くんが自転車なんてめずらしいな。桃ちゃんの後ろにのっけてもらってたのは、何度も見たことあったから、てっきり越前くんは自転車持ってないのかと思ってたけど

「これ親父の。母さんに修理出すよう言われてきた」
「あ。越前くんも!?あたしもお母さんにコキ使わされて買い物してたの!お母さんってほんっと人使い荒いよね!!」
「ほんと」

まさかこんなことで越前くんと気が合ってしまうとは。いやでも本当に!お互い大変ですな

「それであんたそんな荷物持ってんだ?」
「そうそう!白菜二個だよ!重くて重くて!そんでさっき足ひねっちゃってさ…」
「は?」
「あ?」

あああああ言ってしまった!!!

「いっいや!足を!足をひねりそうになって!でもひねってないよ!こんなの全然痛くない…っつ…!」
「…………足ひねったんでしょ」
「いや!でも歩けますし!」
「めちゃくちゃ辛そうな顔してんだけど」
「いや!これお母さんに怒ってる顔だから!」
「意味わかんないから」

どうしよう。足をひねって動けない挙句、越前くんにこんなところを見られるなんて…。こんなの恥ずかしすぎる。それに越前くんはこの状況をきっとなにもなかったかのようにスルーをかます確率80%!この人が助けてくれるわけないんです。ファイトって言って終わりな気がす

「乗れば?」
「……………はい?」
「足、痛いんでしょ?」
「えっ…いや…ほんとに?」
「見ててらんないし」

うそだ。越前くんが、あたしに手を差し伸べてくれるなんて……。越前くんに荷物をカゴに入れてもらい、あたしは越前くんの自転車に乗った…

「…ってなんであたしが漕ぐ形になるの!?」
「あ。つい慣れで」

けが人に何自転車漕がそうとしてるんですか、この人!

「ていうか、越前くん二人乗りできるの?」
「…まあ、なんとかなるでしょ」
「えっ、大丈夫なの?こけないでよ?」

って言った瞬間からぐらぐらしてるし…!大丈夫なの!?ほんとに!

「前のカゴの白菜が重たいんだよ…」
「白菜の所為にしないでよ…!ていうか!お尻痛い!」
「文句言わないでよ。乗せてやってんだから」

自転車に乗っててもあたしたちは喧嘩ばっかりだった。ぐらぐら、ぐらぐらと揺れながらも前に進んでいる自転車。越前くんの背中は、あたしとあんまり変わらないけど、今日だけはなぜか、大きく見えた。

「あのさ、背中くっついててくんない?じゃないと落ちるよ?」
「えっ…うわああ!ちょっ落ちる…!」

ぐらっと揺れて、とっさに越前くんの背中にしがみついた。越前くんの体にあまり触ったことがないあたしは、改めて彼の鍛えられたからだを実感した。小さいながらも、しっかりとしていて、やっぱり、男の子なんだなあと思った。困ったなあ、これじゃあたし、見栄張れないじゃん。あたしが見栄張ったところで、男女の差は埋められないんだと気づいてしまった。ある夕日が落ちる日のことだ。

2012/06/13
理奈さん、この度は青春フリリクにご参加くださりありがとうございます!青春を何度も読み返していただいているようで嬉しいです。今回は詳しいシチュエーションも書いてくださり、とっても書きやすかったです!これからも更新がんばります。ありがとうございました。