seisyun | ナノ


「あ」
「あ」

普段、男子テニス部と女子テニス部の終わる時間って微妙にずれてる。男テニは割と早く終わるんだけど、女テニは部活後のおしゃべりが長くなったりするみたい。だから、そんなときに男テニである越前くんと帰りに出会うなんて、けっこう珍しいんだよね。

「今日は男子遅かったの?」
「まあ、ミーティングっぽいのしてたからね」
「ふーん」
「…あんた一人?」
「うん。みんな別方向なんだよねー。だからいっつも全力疾走で帰ってる」
「………」
「越前くんは?桃ちゃん一緒じゃないの?」
「桃先輩は先帰った。なんか用事あるって」
「へー……」
「……………」
「……………」
「…………帰る?」
「…ん」

基本越前くんと一緒に帰ることなんてあんまりない。さっき言ったように、時間帯が合わないし、越前くんは桃ちゃんの自転車に乗っけてもらって帰ってるらしいから。だから一緒に帰るとか、いったいなにを話したらいいのか、よくわからないんだよね…。

「…………」
「……………」

わーびっくりするくらい沈黙! いやあ、あたしが話さない限り越前くん全然喋らないからね〜。うーん、なに話そうかなー

「ねえ」
「んえっ!?」

なんと越前くんから話しかけられた。意外すぎて変な声出ちゃった

「あんたいっつも一人なんでしょ?」
「いやちゃんと友達いるよ!ひとりぼっちじゃないよ!」

あたしの友達関係知らない人多いと思うけど、ちゃんと親友と呼べる人もいますからね!

「…そうじゃなくて、帰りの話」
「あっ、そっちか!うん、まあ大体ひとりかなー」
「危なくない?」
「えっ…まあ、危ないかもね…。人通り少ないとことかあるし」
「お母さんとか、迎えに来てもらえないの?」
「うんーちょっと難しいかなー」
「……………」

あれ…?まさか越前くん心配してくれてる?さっきから心配そうにこっち見てくるんだけど。なんだろう、この複雑な気持ちは…。

「あんた、仮にも女なんだから、気を付けなよ」

仮にもは余計だが

「越前くん心配してくれてるの?」
「まさか。あんたが危ない目に合うとは思わないけど、こんな時間に一人っていうのも…あんま良くないじゃん」
「やっぱ心配してくれてるじゃん!」
「してない」

相変わらず素直じゃないなあ!いいけど。越前くんはめずらしく心配してくれて、家まで送ってくれた。ファンタ奢るよう言われたけどね!いいよ、許すよ。

2012/06/28
しんくさん、この度は青春リクエストにご参加くださりありがとうございました。越前くんとの下校時とのリクエストをいただいて、じつは前々から書いてみたいなと思っていたシチュエーションだったので今回執筆して満足してます。越前くんと主人公の絡みが美味しいだなんて・・これからも美味しい絡みを書けていけたらいいなと思ってます。今回はありがとうございました。