seisyun | ナノ


ここの合宿所は、山奥にあるけど多くのテニスコートが設置されている。あたしたちはそんな合宿所で男女合同の合宿を行うことになった。練習はいつもよりきついし、なにより日差しがまぶしくて暑い。そんな炎天下の中練習を終えて、お風呂やご飯などを済ませて夜を迎えた。山奥であるゆえに、街灯なんてあまりなくて、なにより見上げると星がきれいだ。この合宿所は天井が突き抜けになってるところがあって、そこからたくさんの星がみえてつい見入っていた。そこへ、彼がやってきたのだ

「寝れないの?」

見上げていた顔を越前くんに向けると、彼はTシャツに短パンというラフな格好であたしの元へとやってきた。Tシャツの柄は意外にも猫のワンポイントというなんともかわいらしいデザインだった。だけどあたしはあえて「おもしろいTシャツ着てるね」と茶化す。すると「あんたもね」と、ブルドックのワンポイントでなんとも迫力のあるあたしのTシャツを見てそう言った。かわいいじゃんか。

「越前くんも寝れないの?」
「べつに。トイレ行ってきただけ」
「あら、そう」

そしてあたしは再び視線を上へとうつした。星がきれいだ。すると、越前くんはあたしとは少し離れたところに座り、空を見上げた。

「あんたさ、星座わかるの?」
「わかんない」
「やっぱりね」
「…そういう越前くんはどうなんですかー」
「…わかんなくても困んないし」
「人の事言えませんからね?」

そうやって星座もわからないまま、ただきらきらと光り輝く点を見つめながら、静かに時間をすごした。数分くらい経ってさすがに首が痛くなったのか、あたしと越前くんはその後首を押さえて下を向いていた

すると、越前くんはおもむろに近くにあったピアノに近づいていった。ピアノのふたを開けて、ラの音をしずかに鳴らした

「越前くんピアノ弾けるの?」
「いや全然」
「なんで開けたの」
「なんとなく。ピアノとか見たの初めてだし」

あたしはそれを聞いて、ふふん、しょうがないな、とピアノに向かっていった。星座はまったくだけど、ピアノなら少しは弾ける。あたしは自信満々に鍵盤を鳴らし始めた

「………てか、こんなん誰でも弾けるでしょ」

そう越前くんが言った。そう、これは幼稚園児でも弾けるであろう「きらきら星」だ。ちなみにあたしはこれしか弾けない

「自信ありげに言うから、どんなかと思えば」
「なんだと、じゃあ越前くん弾いてみなよ!」
「…いいけど」

越前くんに弾かせてみると、すぐに違うところに指が当たってきらきら星ではなくなってしまった。やーい、へたくそ〜。なんて茶化すと、越前くんは悔しそうに「今のは指が当たっただけだし」と、いつもの負けず嫌いが出た

テニスじゃ負け知らずの越前くんだけど、こういうところも見えると、妙に親近感がわいてしまう。あたしは越前くんにきらきら星を教えながら、星空の下、有意義なひと時をすごした

2012/07/20
桜叶さん、この度は青春フリリクにご参加くださりありがとうございます。今回は切甘というリクエストをいただいて、いろいろ考えてみたのですが、ちょっと温度を下げただけの二人の会話ですね。これくらいしか思いつきませんでした。申し訳ないです。これからも更新をたのしみにしていただけるとうれしいです。ありがとうございました