このまま一生彼氏もできなくて、ましてや旦那すらできなかったら、お見合いとかするんだろうな。まあそれで結婚ってことになれば、結果オーライかな。この10何年間ずっと彼氏や色恋沙汰に目覚めたことがないあたしは、若い脳をフルに活かして考えていた。婚期まっさかりのような考え方をしていたあたしなのだが、 お見合いとかさ、親の勧める話って、思ったより不愉快なもんだと改めて知りました 「なんでいるの」 家の食卓には母さんお手製の煮物や焼き魚が並んでいた。今日は和食か。ってそういうことじゃなくて、あたしは料理よりも先に気になる存在がいた。仁王雅治だ。仁王はあたしと同じクラスで、クリーニング屋さんを営むあたしの家の手伝いをしてくれる、いわばバイトだ。あたしは何度か鉢合わせており、その度にあたしをからかう、というかいじり倒すやつだ。そしてあたしの学校での近況報告をうちの母親にするという密告者でもある。そんなやつが、どうしてあたしの食卓に自然と溶け込んでいるのだ 「雅治くんも夕飯に誘ったのよ」 いやなんで誘う必要がある。お母さん。仁王も仁王だ。夕食を目の前に普段は見せない満面の笑顔を向けている。たのしそうだなおい。お父さんも!なんでそんな自然に受け入れてるの!なにこの家族おかしい!! 「ほら、そんなとこ突っ立ってないで早く座りなさい(雅治くんのとなりに)」 いやだ、なんか不思議なテロップが見えるよ。どうしよう。ていうか仁王おまえもにやにやと笑って隣の椅子ぽんぽん叩くな!お前らグルか!!いやだもうこの家族!ぜったいたのしんでるよ! 「お母さん、この魚おいしいです」 「ほんとう?ありがとう雅治くん」 「あ。お父さん、お酌します」 「おお、ありがとう雅治くん」 …………………つーかなんだこの爽やか少年は!誰この子。こんな人だったっけ。というか、標準語!! 「雅治くんみたいな子がお婿にきてくれたらいいのに」 「ほんとですか」 「君だったら大歓迎だよ」 なにが大歓迎だ。そこは反対するところだろう、父よ。父の言葉を聞いて、仁王は獲物を捕らえたような目をしてこっちを見つめてきた。 「じゃあお互い名前呼びから始めるとするかの」 もう、どうにでもなれ 2012/02/16 |