ひたすら越前くん! | ナノ

「ねえ、あんた浮気してるでしょ」

ぎくり、と私の心の中は音を立てた。越前くんとは付き合って結構長いほうだけど、初めから彼の鋭い直感力には毎回驚かされるものだ。なんでばれたんだ…!

「うっ浮気!?やっだなー越前くん以外の人なんか好きになるわけないじゃーん!もしかして、最近かまってないから寂しかった?ごめんね〜!」

と、とりあえず笑ってごまかしておこう…!大丈夫。たいていの事はこの笑顔でなんとかごまかせるはずだ。越前くんは元々あたしに興味なんて持ってなかったし、あたしがかまってあげっるって言っても拒絶されるから、今日もそんな感じで嫌って言われるはずだ

「じゃあ、シよ」

………………………………え?な、はい?ちょっとまって理解できない…よ?あれ?なにかあらぬ言葉がきこえた気がするんですが…。あたしの聞き間違いなのでしょうか?越前くんが誘う?そんなまさか。そんなの天地がひっくり返ってもあり得ないことだと思ってたのに

「なに、しないの?」
「えっえええ…いや、そりゃあしたいに越したことはないけど………」
「浮気してないんでしょ?できないってことは、してるってことだよね?」

なっ、これは、越前くんはあたしを試しているのか…!裏の裏をかいてあたしが浮気しているかどうかを判断しているんだ。策士だな…越前くん…。徐々に迫ってくる越前くんの目は本物だ。だけど、ここで屈するわけにはいかない…!

「ほんと、してないってば。疑いすぎだよ越前くん!こんなに越前くんを好きなあたしが、浮気してるなんて思う?」
「………それもそうだね。なにかと俺のこと好きだ好きだって言ってるし、あんたは浮気なんてできるほど器量な女でもないしね」

………そりゃまあ、不器用なのは確かですけど…。とにかく、なんとか越前くんの目はごまかせたみたいだ

「じゃあなんで、待ち受けが来栖翔だったり来栖翔のCDやファイルや帽子やうたプリのゲームがあるわけ?」

ぜ ん ぶ ば れ て る じ ゃ な い か
なにこれもう嘘を隠し通す前に真実を知られちゃってるから言い訳してももう無駄だったんですね。自分で自分の首を絞めていただけなんですね

「ち…ちがうよ!あれは友達から借りたもので決してあたしが自ら買ったものではなくてですね…!」

しかしどこまでも往生際の悪いあたしは未だ無駄な言い訳をし続けていた。越前くんはついにあたしを壁へと追い込み、両肩をがっしりとつかむ

「ほんと、あんたって嘘下手だよね」
「………怒ってる……?」
「べつに?怒りはしないよ。でもあんたが浮気するなら、俺だって浮気しても許されるってことだよね?いろんな女とキスしたり抱いたりしても、あんたは許してくれるってことでしょ?」
「えっ……えっ」
「それなら俺も浮気、してもいいよね?」

普段はあまり見せないくらいの完璧な微笑みを浮かべる。嘘を見抜かれ、迫りくる越前くんに言葉が出ないあたしは口をわなわなと震わせた。越前くんが誰かとキスしたり抱き合ったりする映像がよぎって頭の中から取り払いたくなる

「冗談だよ」
「っ…越前くん…!」

あたしは越前くんに抱きつき、ごめんなさいと何度も涙を交えながら言った

「もう浮気なんてしないから…そんなこと言わないで…!」
「わかってるよ。もう浮気、しないでよね」
「うん………!」

このとき越前くんは抱きつきながら、指でピースサインをしてたんだとか

2011/10/08
この俺得な話…需要があるのでしょうか