ひたすら越前くん! | ナノ

「やっぱ箱根の温泉とかよくない?」

友達と、連休に温泉に行く話をしていた。この連休に温泉ツアーがあって、あたしたちが出せる範囲のお金だったから、話はどんどん膨らんでいった。1泊2日でいろんな温泉を回るツアー。机いっぱいに温泉のパンフレットを並べて、いろいろと計画を立てていた

「あ、ここの温泉よさそうだよ!なんか、美肌効果ばつぐんだって!」
「…ねえ」

すると、あたしたちの話の輪に入ってきた、同じクラスの越前くん。越前くんは、普段あまり話しかけてこない。話しかけてくるといえば、越前くんの場合日直かなにか、事務的なことについて話しかけてきたんだろうと思った

「どしたの?越前くん」
「それ、いつあるの?」
「え……これ…?」
「今週の連休だよ」

あたしの代わりに友達が言うと、越前くんは、ふうんとパンフレットを手にとって見た

「ねえ、これ俺も行っていい?」

………………はい?あたしは一瞬思考が停止した。友達は快く受け入れてる。あの越前くんが…?あたしは越前くんにいい思い出がない。最初の一言は「邪魔」だった。あれは、あたしが通行の邪魔になってたから仕方ないことなんだけど…。でも、そんなクールな越前くんが…温泉に興味を持ってるなんて…。あ、帰国子女だから、かな?

「俺、温泉好きなんだよね。いっつもお風呂に入浴剤入れたりしてるし。たまに銭湯にも行ったりするし」

いや、根っからの温泉好きだこの人。しかもやたら温泉に詳しい。今まで無口だったのに急に喋りだしたよ。え、ほんとに越前くん…?もしかして、二重人格だったとか?

「じゃあ、連休たのしみにしてるから」

彼は意気揚々と、歩いていった。なんだか、越前くんがどんどん謎になってきた

2011/10/08