fiction | ナノ



「おもしろい冗談言うねー。そんな嘘で誤魔化せるとでも思ってんの?」

高尾くんに怒られている。原因は、あたしの自己管理のせいなんだけど。いつもの軽い感じの声で話す高尾くんだけど、目が笑っていない。高尾くんがここまで本気の顔をして怒る理由がよくわからない。ただ部活中に、気怠くて少しよろけてしまっただけだ。立てないほどじゃないし、少し躓きそうになっただけ。そこへ高尾くんが恐ろしいほど速くかけつけてきて、あたしを支える。一体どこから来たの

高尾くんはあたしを保健室までつれてく、と言いだし彼の肩を借りつつ(お姫さまだっこなるものは全力で拒否した)廊下を歩いていた。「そんなに心配しなくていいよ」って高尾くんに言うけど、「体調わるいんだろ?」とあっさりばれてしまう。まあ、朝から熱っぽかったんだけど…。というと高尾くんに頭を小突かれた

「お前さ、そうやっていっつも無理すっから、こんなことになんだぞ?」
「………でも」
「あーもう、でもとか言わなくていいの!どんだけ強情なんだよお前は」
「……ごめんなさい…」

あたしは口をとがらせた。単なる照れ隠しだ。ただ、彼に心配をかけるのはあまりしたくなかったことなので、言い訳したかったんだけど、ここまで心配してくれる彼には感謝するし、すごくうれしかった

「でもあたしが体調悪いってなんでわかったの?」
「お前のこと探すほど見てんのに、わからねえわけねーじゃん」
「えっ、ずっと見てるの…もしかしてストーカー…」
「ちょっそれはまじで傷つくからやめて!」

2012/07/11