fiction | ナノ


息ができない。息が続かない。青峰くんのキスは、がつがつとしていてまるで野獣みたい。それともあたしのキスが下手なだけなのかなあ?口をふさがれていて、鼻でさえ息ができなくて、まるで海底を潜っているかのよう。空気がほしい。苦しい、苦しい。

「お前、キス下手な」
「………うるさい」

勝ち誇った青峰くんの顔が憎らしくて、眉間にしわを寄せて言った。だけどその声はどこか力なく、荒い息遣いと高鳴る鼓動がほんとうに邪魔だ。青峰くんはそんなあたしを後目に今度は熱を帯びた体をさわさわと触れはじめた。やらしい手つき。いつもはボールをつくその手は、マメができていてごつごつとしていた。指の感触はというと、意外とやわらかくて、気持ちよくなっているあたしが余計に嫌になる

「感じてんのかよ、ヤラシー」

嫌な声で煽ってくる彼とそれに応える嫌なあたしが交差する。体は熱を帯びてくばかりで、変な汗もかいてきたし、もういやいや。また唇をふさがれ、息のできない水中へと潜り込んだ。くるしい

青峰くんがあたしを選んだ理由がわからなかった。キスしている最中に息ができないのは、彼をまだ信頼していない証拠なのかも。なんてキスが下手な理由を勝手につけているだけかもしれないけど、なんとなくそう思った。あたしはまだ、彼にすべてを委ねるほど余裕も信頼感もない。だから、なんであたしを選んだの?と強引にキスを止めて聞いてみた。そしたら、なんて言ったと思う?胸がおっきいからだって。

「最低」
「理由なんて必要かよ?お前としたかった、そんだけだ」
「それでも体目当てで近づくなんて…」
「別にいいだろ?」

自分の体も才能のひとつだぜ?
なんて断言するもんだから、あたしはそれ以上なにも言えなくなってしまって、完全に青峰くんに完敗したのだった

2012/07/10
巨乳とかうらやましすぎて