fiction | ナノ


夏休み前、最後の定期テスト。中間ではちょっと痛い点数を取ってしまって、真ちゃんにひどく怒られてしまった。だからお前は馬鹿なのだよ、って言われちゃった。そりゃあ、勉強してないあたしがいけないんだけど…真ちゃんはどうなの、って聞いたらなんと成績優秀者でした。あれっ、あたしより合計点のケタが違う気が…。

このままでは夏休み補習になってしまう、ということで真ちゃん直々に勉強を教えてもらうことになりました。真ちゃんに教えてもらえば、百人力だよね!なんて言ったらまた馬鹿かと言われてしまった。ほめただけなのにー。今のは照れ隠しだってことはわかってるけどね

「で、どこがわからないんだ?」

前半は真ちゃんにわからないところを聞いていった。さすが、成績優秀者だけあって、全教科わからないところを聞いたら答えがすぐに返ってくる。あたしがここがわかんない、と教科書を指差すと、真ちゃんはあたしのほうにぐっと寄ってきて、顔を上げると目の前に真ちゃんの顔があるくらい近くなった。真ちゃんの顔をじっと見て、睫毛が長いとことか、意外と鼻も整ってるなあ、なんて思っていたら、真ちゃんが見られていることに気付いてびっくりして距離が遠ざかった。「なにをしている!聞いているのか!」とまた怒られてしまった

あたしの場合、暗記系が苦手なみたいだから、後半はずっと一人で暗記をしていた。一息つこう、と思って手を止めたら、向かいに座っている真ちゃんは肘をついて、こくりこくりとうたた寝をしていた。まあ、めずらしい。そういえば最近、練習と自主練で忙しそうだったもんなあ…。テスト期間中は部活禁止だし、授業中も真ちゃんは滅多に寝ないから、そっとしておこうかな。

今日やる範囲も一通り終えて、辺りも暗くなってきたころ。真ちゃんはまだ夢の中で、あたしは真ちゃんの寝顔を堪能しながらそろそろ起こさないとなあ、と思っていた。だけどこんなに珍しい真ちゃんを見れなくなるのは、なんだかつまらないと思ったので、あたしは真ちゃんの眼鏡を取って、その淡麗な顔を拝見した。ほんとに、きれいな顔をしてる。おまけに、髪まできれい。あたしは夢中になって真ちゃんの髪を撫でていると、その手がいきなりつかまれてあたしはびっくりした。振りほどこうにも、真ちゃんの力が強いのか振りほどけなかった。やばい、また怒られそう

「…さっきからなにをしているのだよ」
「……あれ?もしかして気づいてた?」
「当たり前だ。俺が寝ているのを良いように…」

どうやら、怒ってるわけでもなさそう。だけど、ごめんなさい、といつものように謝ると、許さん、という言葉が返ってきた。あらま

「なにを企んでいたのだ?」
「…お顔がきれいだなあと思いまして」
「…!世辞ならやめろ…」

照れてる照れてる。かわいいなー真ちゃんは。すると、今度はあたしの顔をじっと見つめ、ずいっと体を乗り出した。そして、あたしの顔を、髪を優しく撫でた。真ちゃんは無表情だけど、どこかたのしそうな顔をしていた。あたしは真ちゃんの顔を見ながらそんなことをされて、徐々に恥ずかしくなってきた

「真ちゃ…」
「お前が触っていたのだから、俺が触っても問題ないだろう?」

そして、あたしの頭を手で押さえてあたしにキスをしたのだった

2012/07/09