fiction | ナノ



「名前さん、寒くないですか?」

黒子くんはあたしの体をぴたぴたと、体温を確かめるように触った。何度も、何度も。黒子くんの手のひらはあったかくて、あたしの体温がいかに冷たいかが思い知らされる。だけど、黒子くんに触られたところが妙に熱く感じてしまう

「体…冷たくなってるじゃないですか。お腹も」

さわさわと、手を探らせて、あたしのお腹を撫でてくれた。とってもあったかくて、気持ち良いけど、同時に恥ずかしくなった。黒子くんの手の上に、あたしは自分の手を乗っけた。やめて、っていう意味も、もっと、っていう意味どちらも含めて。すると黒子くんはお腹を撫でるのをやめて、あたしの背中に腕を回してきた。そして、黒子くんとあたしの距離は無くなって、肌と肌が密着する形になった

「体温は肌で温めるのが一番だと、本に書いてありました。本当に、温かいですね」

黒子くんの声が耳元で優しく聞こえた。黒子くんはあたしの上に乗っかっていた体勢から、横になってあたしに体重がかからない形に変わった。黒子くんの手はあたしの背中も優しく撫でて、あっためてくれていた。なんて幸せなんだろう。あたしも、黒子くんの背中に腕をまわし、ぴったりと離れないように抱きしめた。体温を共有している感覚と、密着した肌が心地よくて、あたしはゆっくりと目を閉じた。

2012/07/04