fiction | ナノ


「なーんで逃げんの?」

高尾くんの腕に囲まれて、逃げ場がなくなっていた。あたしは息が切れているのに対し、高尾くんは息一つ乱れていない。あたしが逃げ込んだ体育館倉庫は、ボールの独特な匂いが充満していて、少しこもった感じがする。

なぜあたしが高尾くんから逃げていたのかというと、偶然高尾くんが女の子に告白されているのを見てしまって、とっさに逃げてきた。そしたら高尾くん、追いかけてくるからびっくりしてあたしは体育館倉庫に隠れた。ここなら絶対見つからないと踏んだのに、どこに行ったかも分かるみたいに高尾くんは見つけてくるんだ。あたしの内心を知ってか知らずか、「つーか、俺から逃げられるとでも思ったわけ?甘い甘い」と不敵な笑みを見せつけられた

「………」
「俺が他の女の子からの告白OKするとでも思った?」
「………思って…ないけど…」
「けど?はー、信用ねーのな、俺」
「ちがう…!」

あたしはふるふると首を横に振った。すると、高尾くんはくすっと笑った。

「もしかして、俺にヤキモチやいちゃったとか?」
「………!」
「あら、図星?顔真っ赤になってっぞ」

高尾くんにそう言われて、あたしは顔を手で覆った。すると、その手を高尾くんに制されて壁に押さえつけられてしまう。その瞬間あたしの目の前には高尾くんしか視界に入らないくらい、高尾くんの顔が近づいた

「へへ、かーわいい」
「っ……近い…!」
「可愛いー。耳まで赤くなってんぜ」

突然耳元でささやかれて、しかも息まで吹きかけられてあたしは顔が熱くなって目を瞑ってしまう。
高尾くんはその反応を見て楽しんで、さらに煽るように高尾くんはあたしの耳を銜えた。あたしは咄嗟のことに体が震えて声が漏れてしまった

「こんな可愛いお前がいんのに、他の奴なんて相手するわけねぇだろ?」

2012/06/30
高尾くんも、最近やばいくらいにやばい(笑)