fiction | ナノ


名前ちゃんが眠っている。俺のとなりで。

今日はいろいろあったみたいで、俺ん家にくるなり疲れて眠っちゃったんスけど、俺としてはちょっと寂しいような。モデルと部活の両立で、名前ちゃんと会える時間は限られてたっスから、結構充実な時間にしたかったんスけど。だけど疲れてる名前ちゃんを起こすなんて野暮なことはしない。たしかにかまってほしいのはあるけど、ここまで熟睡しきってる名前ちゃんを起こすのは癪だ。

名前ちゃんは、あまり寝息を立てずに眠る。ほんとに息をしてるのか、たまにわからなくなって、肌を近づけて確かめてみると、息はしている。だけど寝息もわからない上、身体も微動だにしないと、名前ちゃんが死んでしまったかのように見えてしまう…。それが本当につらくて、哀しくなって、見ていられなかった。このまま、名前ちゃんが冷たくなってしまったら…。俺はどうしたらいい?俺はどうしようもない不安にかられて、きづいたら名前ちゃんの唇にキスをしていた。

「ん…………黄瀬、くん?」
「……あ…起きた…っスか…?」

名前ちゃんはゆっくりと瞼を開いては閉じ、開いては閉じを繰り返し、大きなあくびをした。どうやら名前ちゃんは自分が眠っていたことに気付いてなかったみたいで、せっかくの時間を無駄にするところだったと、俺に謝ってきた。俺との時間を大切にしてくれる名前ちゃんに嬉しさを感じたけど、それ以上に嬉しいのは

「なんか、眠り姫みたいっスね」

え?とハテナを浮かべる名前ちゃんに、俺はキスしたことを告げると、彼女は余計に混乱して顔は途端に赤みを帯び始めた。可愛い彼女を見て堪能した俺は、このまま眠っていいよ、と彼女を寝かせた

「また俺がキスで起こしてあげるっスから」

2012/06/08
初めて黄瀬くん書いた…!またほんのり甘く…!
BGMはSEKAI NO OWARI さんで 「眠り姫」をイメージしました。
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