fiction | ナノ


俺は人間にはなれない。

「え?なに?プレゼント?俺に?いい度胸してるよね君。こんなので俺の気を引こうなんてさ。残念だけど、君のプレゼントをもらうほど俺は謙虚じゃない。それにそんな大して得もないプレゼントもらっても俺は嬉しくもないし君も一時の幸福でしかない。俺にそんな感情いだかれても困るし、もともと俺にはそんなやつ一人だけでいいんだよ。俺にはね愛しくてかわいらしくてたまにちょっと往生際が悪い所があるけどそこがまた愛らしいというかね、俺にはもったいないくらいこの上ない可愛さを放っている俺の彼女からのプレゼントだけで十分だから、君のはいらないや」

俺がそういうと目の前の女子は青ざめたような顔をして、俺の目の前から去って行った。
するとタイミングが良いのか、俺の愛しの彼女がしかめっ面をして俺のところへやってきた。

「なんでプレゼント断るだけにあたしのこと含むの。あたしに怒りの矛先が回ってくるからやめてよ。このあとリンチ食うのはあたしなんだからね」

俺はごめんごめん、と怒る彼女が可愛くてつい笑ってしまった。彼女は俺の態度にまた腹を立てたのか口をとんがらせているから、キスしたいの?と聞くと馬鹿と言われた。

「だって、軽く断っただけじゃ絶対また来るかもしれないじゃん。君の事話せばあの子もあきらめてもう俺の前には現れなくなるよ」
「断るのはいいけど、ちゃんと言い方考えてよ。女の子は傷つきやすいんだから、精市の毒舌に耐えられるのなんてあたし以外にそうそういないんだからね」
「………」

「あと、これ………」
「それは…」
「誕生日、おめでとう」

俺は、人を蔑む癖がある。人を貶めて人を泣かせて苦しめて、それでも彼女はこんな俺をちゃんとしかってくれる。俺をすくってくれる。そんな彼女が、愛しくてたまらない。俺に人の温かい感情をくれる。君は、ずるいな。君がいるだけで、俺はもうなにもいらない。

2012/03/05
幸村生誕おめでとう
「神の子祭」さまに提出