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「名前、お前部活なに入るネ?」
「…んー、部活ねぇ、、。特にやりたいってのはないんだよねー。」
「あら、名前ちゃん。だったら、マネージャーしてみない?」
とお妙ちゃんに誘われたのがきっかけだった。うちの高校の看板部活の剣道部はそれはそれは有名で、大会で優勝を総なめしているような部活だった。そこでマネージャーをしていたお妙が人手が足りないとの事であたしをそこに誘ったのだった。
そんな始まりだったマネージャーだけどやり始めてみるとドップリと剣道の魅力にとりつかれ、そしてなんなら部員に対して初恋なんてものも体験してしまっている。
「#name1#ちゃん。ポケーッと沖田くん見てる場合じゃないわよ。早くドリンク作ってあげて」
「や、やめてよ!!そんなポケーッとなんて見てないもん」
「沖田くんを見てた事は否定しないのね」
「…う、、そんなんじゃないもん。」
完全に面白がっているお妙ちゃん。くそう。でも事実だからなんとも言い返せないのが悔しいところだ。
「はい、ここまで!一旦休憩!」
主将の近藤さんの一声でみんな一斉に防具を脱ぎだす。そんなみんなに作ったドリンクを手渡ししていくのが私の仕事。そして先程から言っている沖田さんと私の関係だが、、、
「お疲れ様です。 」
「おー。」
なんて最低限の会話しかしたことがない。全くもって私の片想いなのである。
同じマネージャーとは言っても実家が道場で筋金入りの剣道娘のお妙ちゃんと剣道とは無縁の一般家庭で防具の名前もやっと覚えてきたペーペーの私。お妙は部員一人一人に構えのアドバイスまで出来る立派なマネージャー。私はというと部室の掃除、道着の洗濯、ドリンク作りなどなど身の回りの世話をする雑用みたいなもんだ。
中々部員と仲良くなれずにこの1ヶ月を過ごしていた。
「今日はここまでにするか!」
「ありがとうございました!!!」
部員たちの挨拶で今日の部活が終わり、部員たちとお妙ちゃんが帰った部室は随分と静かだった。さて、ここからが私の仕事だ。
洗濯をして、掃除をする。その時も片手には剣道の本。早く知識を入れて少しでもみんなの役に立ちたい。
上段の構え、中段の構え、下段の構え。その他にも構えにはたくさんの種類があってもう頭はパンク寸前だ。
「んー、、構えもいっぱいあるんだなーー」
「…なにやってんでィ」
「うわっ!!!沖田君!!!!?!!?」
本を見ながら片付けかけていた竹刀で構えていた時だった。急に話しかけられて飛び上がった。
「驚きすぎだろィ」
「だだだって!沖田くんがいきなり現れるから!!!」
「ちぃと忘れ物しやして。それにしても、、、構えがなってなさすぎらァ」
そう言ってカバンを置くと竹刀を取り出して私の横に並ぶ。
「中段の構えが基本的な構えな。相手ののどに剣先を向けるんでさァ。そして……」
なんてうちの剣道部のエース直々に手解きを受けた。内心バクバクしながら。
「あ、ありがとう!沖田くん!やっぱり本で読むだけじゃ全然わからなくて」
「まあ、うちのマネージャーならこれぐらい分かってもらわねぇと困るんでねィ」
「う、、、」
「それに、、」
「……ん?」
「あんたがいつも遅くまで掃除したり、休憩時間中もその本読んでたのは知ってたんでね」
「…っ!?」
目を合わせてくれない沖田くん。でもいつも部活中見てるはずの沖田くんのこの横顔は今まで見たことない顔だった。
「…いつも助かってまさァ。後は知識だけ。早く色々覚えてくだせェ。」
「う、うん!!!ありがとう!!!!がんばる!!!!」
友達からの勧誘で始めた部活。初めての恋。いつも通りの1日だったけれど、大きな一歩前進です。
すれ違う瞬間の、
君の気配にすらときめいてる