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私の人生は普通に高校・大学を卒業して、就職して丁度いい年で結婚して子供が居て、縁側のある家で猫と老後を過ごすんだと思っている。
「へー高2の癖によく考えてんな、でもマジで普通だな」
「平凡が一番です……何故先輩がリアクションしてるんですか」
「全部声に出てた」
そう言って目の前で期間限定のパフェを頬張る坂田先輩を見て私はやっちまったと頭を抱えた。
穏やかな高校生活を送るはずが気づいたら学校1の問題児と噂される3年の坂田銀時先輩と男女交際なるものをしている。
坂田先輩が突然2年の私の教室へ来て「ずっと好きでした!俺と付き合って下さい!」と公開処刑状態で告白されなんだかんだで交際を初めて3カ月が経った。ちなみに今日はファミレスデートらしい。
「つまんなくね?名前の人生計画。なんかやりてー事とか将来の夢とか無いの?」
「今はまだ無いです。先輩は?」
「一応ぼんやりとな。名前のケーキ一口もらい」
「考えてるんですね。あ、どうぞ」
初めの頃は怖かった先輩も3ヶ月経つと色んな話もできるようになりイメージも変わっていった。
噂では他校へ殴り込みや、女を取っ替え引っ替え夜な夜な遊び歩いてるとか。実際は、他校の高杉さん達とお菓子屋巡りをして、夜になると家の小料理屋を手伝っているだけだった。
そんな先輩も色々考えているんだな〜私も何か見つけるべきかと一口かけたチーズケーキにフォークを入れていると先輩は言葉を続けた。
「客が言ってたけど、平凡過ぎても脳が働かなくなるから程々に予想外の刺激がある方がイキイキするらしーぜ」
「それなら予想外はありました。」
「どんな?」とコーヒーに砂糖を大量に入れながら先輩は促す。甘そうだなと思いながら私はミルク増し増しの紅茶を一口飲んで答えた。
「先輩とお付き合いしてる事です」
「嬉しいこと言ってくれんじゃないの」
「でも先輩はいつから私を知ってたんですか?」
この際だから聞いちゃえと切り出すと先輩は急に飲んでいたコーヒーを盛大に吹き出した。
「え?なんで?知りたいの?」
「だって先輩との接点が全然無かったじゃないですか」
そう言うと視線をあちこち泳がせながら先輩は何やら覚悟を決めて「校門」と呟いた。
「校門?」
「去年、朝の挨拶活動してたろ?そん時に定期券落としちまって名前がわざわざ追いかけて渡してくれた時の笑顔が良いなーって思って……」
どんどん言葉が小さくなり俯いた先輩の耳は真っ赤だった。
「つーか恥ずかしいわ!なんなの名前ちゃんSなの?羞恥プレイがお好みなの?」
去年?なんてこった。そんな些細なきっかけで普通街道まっしぐらな私の日常に銀色のスパイスが加わるなんて。
「へっへえ〜先輩って意外と記憶力抜群ですね」
「オイ忘れてンだろ」
「忘れてないですよ……多分」
「今ので甘酸っぱい記憶が一瞬で崩壊したわ」
1年前のことを必死に思い出していると先輩は少し笑って帰るかと席を立った。
会計を済ませて駅までの帰り道、先輩は必ず手をつないでくれるこの時間が1番好きだ。
「私、覚えてますよ」
「マジでか!やっぱ運命だな」
「挨拶してたら銀時先輩が突然飴を無言で渡して去って行った時とか」
「そっちの方は忘れてくんない?まーでも結果オーライか」
そう言って先輩は繋がれた手を持ち上げてキスを一つ落とした。私は驚いてここ駅前ですと言えずに先輩の顔を見ることしか出来なかった。
「定期券のお返しな」
「いっ今更です!」
私の人生は変わりつつある。けれど、普通じゃなくなったこの毎日も坂田銀時先輩もどんどん好きになっているなと繋がれた手と意地悪に笑う先輩を見て思った。
人生のシナリオだって
アドリブが必要なのです