その恋は突然始まった。放課後いつも通りに友達と帰ろうとすれば、バレーボール部にカッコイイ先輩がいるから名前も一緒に来て。とお願いをされ、私は仕方なく友達と一緒に体育館へ行けば、練習しているバレーボール部の人たちとその練習を見に来ているファンの子でいっぱいだった。ファンの子たちに交じりながら練習を見れば、私の目に一人止まった。黒髪で前髪がパッツンの子だ。その子からずっと目が離せないでいると、目当ての先輩を見つけて満足したのか私に声をかけてきた。

「名前?」
「うぇっ。ごめん。目当ての先輩見れた?」
「うん!瀬見先輩かっこよかった。で、名前は誰を見てたの?」
「あ、あの子」
「あぁ。隣のクラスの五色君か」

もしかして、一目惚れしちゃった?と小声で悪戯っぽく言ってくる友達に対し、私はそうかも。と顔を真っ赤にしながら答えると、頑張れ。と応援してくれて、私は五色君目当てで毎日バレーボール部の練習を見に行き始めた。


「あっつ…」

私がバレーボール部の練習を見始めて、早2ヶ月。梅雨も明けて夏真っ盛りである。けれども、私は今日も五色君を見るために放課後友達と急いで、体育館へ行きファンの子たちに混ざる。はぁ、今日も五色君はかっこいいなぁ。と五色君を見つめていれば、私の周りからファンの子達が離れていく。あれ、私何かしたのかな。

「名前危ないっ!」
「えっ。何?」
「前見て!」

友達に言われ前を見れば部員の誰かがミスをしたのだろう。私めがけて勢いよくボールが飛んでくる。逃げばきゃ。と思ったが、時すでに遅しで私の顔面にボールが直に当たり、私の意識は遠のいた。

「うっ。あれ?」

重い瞼を開ければ白い天井が見える。そうだ。私、ボールを顔面に当たったんだ。横を見れば、心配そうにしている五色君の顔があって。ん。五色君?

「…っ!」
「よかったです。目を覚ましてくれて。すみません。俺がミスをしなければ、貴方の顔に当たらずに済んだのに。お詫びにお姫様抱っこで保健室まで運ばさせていただきました」
「き、気にしないで」

ぺこぺこ。と謝る五色君に苦笑いをしながら、夢なんじゃないか。と頬を抓ったが痛い。これは、夢じゃない。現実だ。憧れの人が隣にいるなんて。私の鼓動がさっきより急に早くなった。

「でも、本当にすみません。俺のせいで目当ての先輩見れなくなったじゃないですか」
「え。ん??目当ての先輩って?」
「瀬見さんや牛島さんを見に来てたんじゃないんですか?」
「それは違う!」

大声で言えば五色君に言えば、驚いた顔で私を見る。それもそうだ。ファンの子達は大抵、先輩方を見に来ているのだから。けれども、私は違う。

「ご、五色君を見るために来てた…」
「えっ」
「友達に連れられてバレーボール部の練習見に行ったんだけど、五色君に一目ぼれして…」
「それめちゃくちゃ嬉しいですっ〜…」

ガタン。とパイプ椅子から立ち上がり、私を抱きしめる五色君。えっえっ。嬉しいってどういうこと?状況がさっぱり読めない。

「俺も貴方のことを一目ぼれして」
「えっえっ」
「あ。名前」
「1年の苗字名前です」
「同い年だったんですね。改めまして、名前さん、俺とお付き合いしてください」

告白される場所は場所なんだけど、両想いっていうことを改めて知って、はい。と返事をすれば、もう一回五色君に抱きしめられた。

相思相愛