銀色

『うっせーな。今10年前から夏実来てんだから黙ってろよ』

『あ゙ぁ゙!?んなわきゃね…』

扉からズカスガと入ってきた人とばっちり目があった。
一瞬で目を奪われるほど、その人は綺麗な銀色だった。

しかしその綺麗な髪と容姿を台無しにするような大きすぎる声に私はやっと正気を取り戻し、10年後に来たのだと実感した。

「……本当に夏実なのかぁ?」

「は、はい」

「初めてあった時、ぐらいか」

こちらに大股で歩いてきて、先ほどの二人と同じようにまじまじと顔を凝視され、それから乱暴に頭を撫でられた。

日本語で話してくれるのは彼の優しさだろうか。
それにしても随分流暢だ。

ベルさんやルッスさんも随分親しげだったが、この人はまた一段と親しいらしかった。
頭をグリグリと撫でられながら私はそう思った。

「オレはスペルビ・スクアーロだぁ、夏実」

「スクアーロ、さん」

「スクアーロでいい」

スクアーロ、と呼ぶとふっと柔らかく微笑んだ彼になぜか私の心臓は飛び跳ねた。
わ、私の好みのタイプは草壁君みたいな人なのに……!!

「10年後バズーカの効力は五分だったよなぁ?」

「そうです多分……」

その強い鼓動の意味を自覚し、少し顔が赤くなったのを見られたくなくて俯いた。

「もう時間かぁ?ボスに会わせたかったんだがなぁ」

ボスって誰だろう。
首を傾げて質問する前にベルさんが割り込んできた。

「しししっオレらが来てから三分は経ってるし、もう無理じゃねえ?」

そうだ、多分もうすぐ五分。
そう思うと何かを頭で感じて、もうすぐに五分経つことが本能的に分かった。

「もう、私……」

ソファから立ち上がると、少しよろめいてしまった。
10年後に来たことは私にとって思わぬ心的負担や不安になったのかもしれないと思った。


「そうか、じゃあなぁ」

よろめいた私を支えてくれた腕に引っ張られて、スクアーロの腕の中にぽすんと入る。
慌てて上を向くと、柔らかい笑顔が目に飛び込んできた。

「スク、」

ちゅ。

ボフンッ!

額に当たった柔らかいものが何なのか認識する前に、私はまたあの不思議な感覚を通って、もとの時間に帰っていった。


「ね、姉さん?どうし…」

「ななな何でもない!」

多分、あれが一番私にとっての心のダメージになった。
キスされた額を抑え、どこに吐き出していいのか分からぬ怒りを持って部屋に駆け上がった。



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