動物園デート


「すいません!すいません!」

私は猪突猛進な笹川を引っ張って、熊の檻から無理やり引き離した。

「ななな何をしているのだ沢田!」

顔が赤い笹川が必死に腕を離そうとしてきた。
女に腕を絡められたぐらいでうろたえてたら彼女なんてまだまだ出来ないぞこの野郎。

「動物園で戦えるわけないでしょーが!この極限バカ!」

「聞き捨てならん!オレはボクシングバカだ!」

「うっさい!」

ぐいぐいと笹川を引っ張って歩いていると、綱吉と京子ちゃんを見つけた。
何やらせわしなく動き回っている。


「沢田!虎がいるぞ!虎と闘わせろー!!」

「ちょっと、笹川!」

目を離した隙に笹川は今度は虎の檻に向かって行った。
またも引っ張り、作業員さんに何度も謝って引き離す。

「笹川、あんたねぇ」

この馬鹿に文句を一つでも言わなければ収まらない。
一応、デートなんだよね?
頭をかかえて口を開こうとした瞬間、園内放送が鳴り響いた。


『お客様にお知らせします。先ほどの爆発により檻が半壊し、ライオンが逃げ出しました。大変危険です。すみやかに園外へ避難して下さい』

「ライオンだと!?闘いに行くぞ、沢田!」

「ちょっと!危ないってば!」

笹川のぐいぐい引っ張られ、ライオンがいるらしい方向に連れて行かれる。
いやいや、絶対死ぬって。
たどり着いたそこには、綱吉がまさに今、ライオンに襲われかけているところだった。

「ーー綱吉っ!!」

叫んだ瞬間、笹川がライオンに右ストレートを叩き込んだ。

「うむ。やはり動物園にきたらこのくらいせねば割が合わん」

「あ、ありえない」

ライオンは笹川の拳を受け、気絶しているようだった。
私はポカンと間抜け面をしてそれを見下ろした。

「今日からオレのリングネームは!!極限ライオンパンチニスト了平!!!」

「だ、ださ……何でもない」


それから獄寺君や山本君、ビアンキが集まってきて、どうやら今日のことはリボーン君に仕組まれていたのだと悟った。
デートだっていうからお気に入りの服着てきたのにー!

「……帰ろ」

ため息を履いて踵を返す。
いつまでもこんなところにいてはまた巻き込まれてしまうかもしれない。

……こんなのは初デートに換算しなくても、いいよね?



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テーマ「人外ファンタジー」
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