バレンタインの誕生日

去年今年は例年になく、慌ただしく12月、1月が過ぎ去った。
これもリボーン君を始め、我が家に騒がしい人々が集い始めたからだろう。
最近ではフゥ太君というチワワを連想させるような可愛らしい男の子が居るようになった。


そして今日は2月14日、聖バレンタインデー。
日本では女の子が男の子、もしくはお世話になった人や友達に主に手作りのチョコレートやお菓子をバラまく日なのだ。

「沢田さん!これ貰って!」

「夏実ちゃん、はい!いつもお世話になってるお礼」

「へへへ、ありがと」

それから私の誕生日でもある。




「今年もいっぱい貰っちゃったなー」

たくさんの女の子、たまに男子から貰った誕生日プレゼントを保管しておくために、私は応接室への道のりを歩いていた。
去年雲雀にしかめっ面をされたのだが、紙袋二個分の、しかも日が日なので手作りお菓子が多いプレゼントを、ストーブがついている温かい教室に置いておくわけにはいかないのである。


「……ん、沢田か」

「草壁君!」

応接室の扉を何とか開けようと四苦八苦していると、後ろから副委員長の草壁君の声がかかった。

「悪いんだけど、開けてくれない?両手塞がっちゃってて」

「ああ、今年もすごいな」

「ふふっ、ありがとう」

扉を開けつつ、さり気なく片方の紙袋を持ってくれる草壁君の男前な優しさにも感動しながらお礼を告げる。

「あれ?雲雀は?」

応接室には誰もいなかった。
てっきりこの時間は応接室に籠もって書類処理をしているのだと思っていたのだが。

「委員長はここ最近は何か忙しそうにしていたが?」

「へぇ、そうなんだ」

私といるときはそんな素振りを少しも見せなかったのに。

「ボルサリーノを被った赤ん坊と話しているのをよく見かけたな」

「あははは……」

前のように間違いなく何か企んでいるんだろう。
関わらないようにしないと。

「あっ、草壁君、これ。いつもありがとね」

「……いいのか?」

「うん、チョコブラウニーなんだけど食べれる?」

昨日に夜にこっそり作ったお菓子を家から持ってきた小さい紙袋から出し、草壁君に渡す。
ちょっと可愛く包装してみたりしたのは乙女心というやつだ。

「ああ、有り難く頂く」

包装された袋を持って優しく微笑む草壁君にクラクラする。
……こういうギャップに弱いんだよね、女の子はさ。

「……う、受け取ってくれてありがと!じゃあ私行くね!」

「あ、待て。沢田」

私を引き留めた草壁君はなにやらごそごそと何かを学ランのポケットから取り出し、私に差し出してきた。

「誕生日、おめでとう」

「え、あの……あ、ありがと。開けてもいいかな?」

「あ、ああ」

二人して顔を赤くさせながら、身じろぎをしている様子はさぞかし青春しているように見えたであろう。草壁君の渋い顔とリーゼントがなかったら。

「……これ」

「沢田はいつも髪を団子にしているから、こういうのも似合うと思ってな。も、もちろん校内では禁止だが……」

可愛らしいピンクの水玉の包装紙を開けると、そこにはこれまた可愛らしいシュシュが鎮座していた。

「あの、あの、本当にありがとう!!……わ、私、あの」

何を言おうとしたのか、まったく自分でも想像がついていなかった。
口が勝手に開く直前、予鈴のチャイムがなり響いた。

「じゃあ、私。い、行くね」

「あ、ああ。遅刻しないようにな」

顔の赤い草壁君を応接室に一人残し、顔の赤みを消し去るために急いで冷たい廊下に出た。

紙袋の中には残り五つ。
綱吉やリボーン君、ランボ君、フゥ太君の分は家に置いてあるし……誰に渡そうかな。
そう思いながら、右手にあるプレゼントを握ってしまってそれを再確認し、また顔が赤くなるのを感じた。

それを振り払うように、雲雀に見つかったら確実に咬み殺されそうなスピードで、廊下を駆けていった。


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