お見舞い


綱吉がまた入院したらしい。
前に入院したのは誕生日の時だったっけ。
リボーン君の知り合いの、ディーノさんが来てから綱吉の苦労は更に増えたのだろう。

……あれからディーノさんは私を見つけると必ずプロポーズするようになってしまった。
人が居ようとお構いなくだ。
前に商店街でプロポーズされた時は本当に恥ずかしかった。

なので私は出来るだけ会いたくないのだが、母は友人と先約があったらしく見舞いにはいけないので、仕方なく私が代わりに行くことになった。


「ん?」

綱吉の荷物を持って玄関を出ようとすると、カバンに入れていた携帯がブブブッと振動した。
カバンから携帯を取り出して開くと、そこには草壁哲矢の文字が浮かんでいた。

草壁君とは番号は互いに交換しているものの、電話では話したことがなかった。
急な用事は雲雀に聞けば大抵のことは分かるし、簡単な用事はメールで済ますからだ。
私はドキドキしながら通話のボタンを押し、携帯を耳に押し付けた。

「も、もしもし草壁君?」

『たたたた大変だ沢田!!委員長が!恭さんが!』

公私混同をせずきちんと副委員長として働いている草壁君が、私的に呼んでいる雲雀の愛称を言いながらものすごく狼狽えていた。

「ちょっどうしたの?と、とりあえず落ち着いてよ。ね?」

『あ、ああ……ハアハア。俺も今知ったのだが、委員長が風邪をこじらせて入院なされた』

「雲雀が!?それ本当なの?」

あの雲雀が風邪……!?
何かの間違いじゃないのか。
無意識に力強く携帯を握りしめた。
いや、それにしても……。

「……雲雀も人の子だったんだねぇ」

『……それで、だな。俺は委員長から代わりに業務をしなければならないから、良ければ見舞いにいってもらえないか?並盛中央病院なんだが』

「中央病院?いいよいいよ。元々弟の見舞いに行くつもりだったし。じゃあね、草壁君」

ドキドキが静まらないまま携帯を切って、今度こそ家を出た。
確認したポストには電気使用量金の紙が入っていた。

そういえば前に雲雀に見舞い品貰ったし、何か買っていこう。




「……な、何やってんの」

「やあ、沢田」

「ね、姉さんーー!?」

余りの驚きに肩からずり落ちた綱吉の荷物をかけ直す気にもなれない。
今、病院という安全な場所で私の弟が、私の友人によって咬み殺されようとしていた。

ああ、並盛中央病院って風紀の管轄だったけ。
遠い目をして現実逃避する。

そうだ、私はただこれを私に来ただけなんだ。

「……雲雀、これお見舞い。綱吉、荷物持ってきた。じゃっ」

「姉さんーー!ちょっと待って待って!」

がしっと力強く綱吉に足首を掴まれる。
ごめんね、綱吉。お姉ちゃんも女の子だから雲雀に殴られるのはごめんなんだ。

「私、用事思い出したから」

「超棒読みーー!!」

それからリボーン君が来てなんとか雲雀の機嫌は収まったが、綱吉が静かに安全に入院出来ることはなかったらしい。




「沢田、林檎剥いてよ」

「雲雀、実はめちゃくちゃ元気だよね」

「うさぎね」

「……はいはい」



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