理解不能


「うるせーぞ、ディーノ」

「いってぇ!」

「何でオレまで!?」

ディーノさんは勢いよく椅子から立ち上がったのだが、リボーン君がどこからともなく鞭を出してディーノさんと綱吉に叩きつけ、制した。

「女にはな、そんなにガッツリいくと逆に引かれるんだぞ。しかも日本人の女はスキンシップや口説かれることにはあまり慣れてねぇ。適度に距離を保ちつつ縮めていくんだぞ」

「そ、そうだな!……夏実。隣に座ってくれないか?」

「はぁ……」

言われるまでもなく一つだけ開いている席に座る。
左はディーノさん、右は最近ランボ君同様うちに居始めたイーピンちゃん、女の子である。

ちなみに目の前は険しい顔をした愛海だ。
せっかくの可愛い顔が台無しになっている。
帰ってきた時は居なかったのだが、おそらく例のプロポーズを綱吉から聞いたのだろう。
態度にこそは出さないが、愛海はイケメンは全て自分のものだと思っている節がある。
可愛いから別にいいのだが。

「そういやちゃんと自己紹介してなかったよな。オレはキャバッローネファミリーのボス、ディーノだ。よろしくな」

「あ、はい。よろしくお願いします」

ファミリーなどの単語は一切無視で、日本人の性かにこりと無意識に笑えばディーノさんは飛び跳ねて椅子から転げ落ちた。

「……大丈夫ですか?」

「夏実、気にすんな」

「う、うん」

リボーン君の言うとおりにして夕食に手をつける。
綱吉たちの話している会話を極力聞かないように、私が綱吉のファミリー?になぜか入っているのも聞かないように、隣に座るイーピンちゃんの魚の骨を取ってあげる作業に専念した。

和やかに食事が進んでいたが、悲鳴が聞こえてきた。
風呂場に向かったはずの母さんの声だ。

「「母さん!?」」

「奈々さん!?」

「どーしたんだ!!」

勢いよく立ち上がったディーノさんはばったーん!思い切り倒れた。ちらりと横目に机にこぼれすぎているご飯も見えた。
初めて会った時の軽やかさはどこへ行ったのだろうか。


「オフロに!オフロに〜っ!」

涙目な母が台所に飛び込んできて私に勢いよく抱きついた。
綱吉たちが風呂場に向かい、私は未だに抱きついたままの母の話を聞いてみると、どうやら大きなカメがいたらしい。
そんな馬鹿なと笑い飛ばせない自分に気が付くと私は深いため息を吐いて母をなだめた。




結局、カメはディーノさんのペットだったようで、カメに食べられた風呂場は後日ディーノさん持ちで直してくれるらしい。
それまでは隣の愛海宅の風呂を使わせてもらうことになったのだが、今日はディーノさんの強い提案で銭湯にいくことになった。


「……男女一緒じゃなかったのか」

銭湯前でディーノさんがぽつりと呟いたのを聞いて、私は人生で初めて本気で人を殴った。




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