*体育祭前日
それは秋一番の行事。
体育祭は並盛中でも例外ではなく超ビックイベントである。
生徒会長の私は各委員会、主に風紀委員を中心に去年よりいい体育祭にしようと夏休み返上で計画を練っていたのだ。
ちなみにチーム割りは縦でA・B・C組に分かれて作る。
そして2年A組の私はA組の副代表に選ばれた。
「“極限必勝!!!”これが明日の体育祭での我々A組のスローガンだ!!勝たなければ意味はない!そうだな沢田ぁあ!」
「そうだね」
総勢100人以上の雄叫びを聞き、笹川の主張を軽く受け流す。
私は当日には生徒会長としての挨拶や時間通りに進行出来るように各面にフォローをしなければならないので、のんきに応援したり競技に燃えたりすることはできないのだ。
なので体育祭の競技や組をまとめることは燃えまくっている笹川了平に任せればいいと思ってこの会議は事前に全てを笹川に一任している。
つまり前には立っているが私はお飾り代表者ということだ。
しかしそれは失敗だったと気が付いた。
「……オレは辞退する!オレは大将であるより兵士として戦いたいんだー!!」
この男はどうしてこうも……。
一年生の時から同じクラスで、迷惑度で言えば雲雀と並ぶほどの熱血お馬鹿野郎なのだ。
……そしてそんなお馬鹿たちを友人に持つ私も馬鹿なのか。
静観を決め込んではいたが、変な方向へ動き出した会議に口を挟もうとした瞬間、笹川が大声で言いきった。
「だが心配はいらん。オレより総大将にふさわしい男を用意してある……ここにいる副代表の沢田夏実の実弟!1のA、沢田ツナだ!!」
「はぁああ!!?」
この男は何を言ったのか。
そろそろ頭が痛くなってきた。
出来るわけないのに。
仮にも一年生だ。
三年生にとっては中学校生活最後の体育祭。その一番の思い出になるであろう棒倒しの総大将を一年生がやるというのは少々頂けないというものだ。
……代表の時点で二年生が仕切っている事実は見ない振り。
「賛成の者は手をあげてくれ!過半数の挙手で決定とする!」
「沢田さんの弟なら…」
予想に反してそんな声がちらほら聞こえてきた。
二、三年生は綱吉が一年生ということもあって“ダメツナ”ということを知らない者が多いということある。
そればかりか姉である私が一年生の頃から生徒会長をし、あの雲雀と連み、意見をすることが出来る唯一の人物と大抵は知っているのでその弟ならばという気持ちがあるらしい。
そして私が口を挟む前に、あれよあれよと綱吉が棒倒し総大将になってしまった。
男子の競技だし、私には関係ないよねと綱吉の助けを求める視線を目を反らして遮断した。
がっくりとうなだれている綱吉を見て応援ぐらいはしてやろうとそう心に決めた。