嫉妬


結果から言えば、三人共奇跡的に無事だった。
何故無事だったかは分からないがきっとあのリボーン君が何かしたのだろうと私は思う。

ため息をついて座り込む。
スカートが汚れるとかそんなこと思う余裕は今はなかった。

野次馬の一年生たちは、山本君のジョークだ、やっぱり綱吉は変態だと勝手なことを口々に言って屋上を後にしていった。


「あの、大丈夫ですか?」

「えっああ、ありがとう」

声をかけられた方を見れば、正統派美少女というべき可愛らしい女の子が座り込んだままの私に手を差し伸べてくれていた。
有り難くその手を取って立ち上がる。

「あの、ツナ君のお姉さんですよね?生徒会長の」

「ええ、そうだけど……あなたは?」

「ツナ君のクラスメイトの笹川京子です」

可愛い女の子、笹川、一年。

「もしかして笹川の妹さん?」

「はい!兄がお世話になってます」

京子ちゃんの可愛い無邪気な笑顔は太陽のようだった。
こんなにも似てない兄妹がいて良いものかと真剣に悩んでしまう、この似てないっぷり。
私と綱吉もあまり人のことを言えないんだけど。


「……ツナ君、本当にすごいですね」

京子ちゃんは先ほど壊れたフェンスを見てそっと呟いた。
その横顔は微笑んでいる。
きっと綱吉を少なからず信頼し尊敬しているのだろう。

「そう、ね」

……私の知らない強い綱吉を知っているんだ、この子は。

綱吉はもう、私に守ってもらう必要はないんだ。

昔みたいに私に遊んでもらわなくたって、勉強を見て貰わなくなって、悩み事を聞いて貰わなくなって、いいんだ。

私がいなくても、友達と協力して何でも出来るようになったんだ。


そう思うと沸き上がってきたなにか黒いものを押さえ込んで息を吸い込んでゆっくり吐く。
この感情は京子ちゃんに向けるものではないのだ。

「……私、行くね。綱吉と仲良くしてあげてね、京子ちゃん」

「ふふふ、はい!お姉さん!」

にこりと口だけで笑って屋上を後にする。

八つ当たりをするわけではないが、学校にいない雲雀には早急に古いフェンスについて文句を言ってやろう。
それくらいは、許してほしい。
ごめんね、雲雀。




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