球技大会


最近、綱吉が楽しそうに学校へ行くようになった。
前はあんなにも嫌がっていたのに……あのリボーンという赤ん坊の家庭教師が来てからだ。

弟の気持ちの変化を嬉しく思う気持ちもあれど、前より騒がしく、なぜか爆発音なんかも頻繁に聞こえるようになったので、積極的に関わるのは止めようと強く決心した。




晴れ渡った青い空、今日は絶好の球技大会日和だ。

「雲雀は球技大会出ないの?」

「僕が草食動物たちと群れると思ってるの?」

「だよね」

静かな風紀委員室に聞こえてくるのは、グランドからの歓声。
確か山本君はえーと、サッカーに出るって言ってたっけ。
イケメンだし運動神経いいし、人気者だしきっと活躍してるんだろうなぁ。

「私も出たかったなぁ」

元々はバスケットに出るつもりだったのだが、先日の風邪のせいで母に止められたのだ。

「見てくれば」

「いいの?」

「見回り兼でね」

「……はいはい」

彼の分かりにくい優しさを有り難く受け取って第三会議室を出た。
私が出るはずだったバスケットを見るために体育館へ向かう。
バレーと平行してやっているのでまだ間に合うだろう。

こっそりと体育館の裏口からはしごを使って二階へ登った。

本来は立ち入り禁止の場所なのだが気にはしない。
だけど一応、生徒会発行の新聞記事のためと名目しておく。

意外に多い観客数を見て、驚いた。
それよりも驚くべきことが目の前に座っていた。

「ちゃおっス、夏実」

「り、リボーン君?」

どうして学校にいるのだろうと思ったが、最近の家庭教師は過保護なんだと勝手に結論づけてリボーン君の隣に座る。

「え、綱吉?」

体育館の正面入り口から弟が入ってきた。
覚悟を決めた顔をしている。

私が休んだ日に、綱吉があのウザイ持田を倒したと雲雀から聞いたが、綱吉は球技はまったく駄目なのに、どうして。

「わかればよし」

「え?」

「くらえ!!」

リボーン君がどこからともなくまるで本物のような銃を取り出して、綱吉の両足に向けて、撃った。

あまりの非現実的な出来事に目を見開く。
まったくまぬけなことに口も開いていたようだ。

そして次の瞬間、綱吉が、跳んだ。

湧き上がる大歓声。

私は風邪が悪化したのかなぁ、幻覚が見える……そう呟きながら現実逃避のために背を向けてふらふらと歩き出した。





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