風邪とお見舞い


目が覚めると、身体がどうしようもなく熱かった。

どうしようかと考えていると、二、三回ノックが聞こえて母が心配そうな顔で入ってきた。
いつもの時間に起きない私を訝しんで部屋に来たのだろう。

「母さん…」

「……なっちゃん!顔真っ赤!珍しいわねぇ、熱なんて」

先ほどまで水仕事をしていたのだろう母の手は、冷たくて気持ちが良かった。

「今日は休みなさいね。学校には連絡しておくわ」

心配そうな瞳でこちらを見る母に笑顔で返すと、安心したように母は部屋を出ていった。

私はゆっくり目を閉じた。
今度こそ、あの夢を見ませんように。




いつの間にか寝ていたのか、とぼんやり見慣れた天井を眺めてゆっくりと体を起こす。
寝過ぎたせいか節々が痛い。

熟睡していたようで、あの夢は見なかった。

「やっと起きたのかい。寝すぎだよ、君」

聞き覚えのありすぎる男の声がして、恐る恐る顔を動かす。

まさか、まさか、私の部屋にいるはずなんかないのに。

「ひ、ばり?なんで…」

雲雀恭弥が、そこにいた。

驚きで目を見開いていると、雲雀が懐から何かを取り出した。

「球技大会の書類。君のサインがない」

ですよね、分かってました。

受け取り、手早くサインを済まして雲雀に突き返す。
それを満足そうに眺めて雲雀は無言で部屋を出ていった。

やっぱり、見舞いではなかったんだ。サインがないから仕方なく、きただけなんだよね。


それから少ししてから母が入ってきた。
どうやら母が雲雀を招き入れたらしい。なにしてんの。

「はい、お粥とお薬とお水。それと……」

お盆の上に乗っていたのは可愛らしいうさぎの形のりんごだった。

「雲雀くんがお見舞いにフルーツの詰め合わせをくれたのよ。りんご好きでしょう?」

ツンデレかこの野郎。
私は遠くで聞こえるバイクの音に笑みをこぼした。





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