『な、なに!?やめてっ!』

『おとなしくしなさいよ!!』

『ちょっと!』

ああ、またこの夢だと夢の中で私は悟った。

私は小さい頃からこの夢しか見たことがなかった。
他のみんながいうような楽しい夢や怖い夢、空を飛ぶ夢などはまったく見たことがない。

それを怖いとか気持ち悪いとか思うのは小学生で卒業してしまった。
浅い眠りの時には必ず、どう足掻こうとこの夢になる。
諦めたと言った方が正しいか。

『馬鹿なことは止めて!』

『馬鹿なこと?馬鹿なのはあなたでしょ!さっさと死んで!』

『何で、何で私を……?』

『あんたを生け贄にして私は――――の世界に――――するんだから!死んで!早く!』

『うああっ!やめ……!』

お腹に刃物がえぐり込んだ。
そして抜き取って、胸や顔を何度も何度も浅く指す。

これじゃあ急所には刺さっていないから出血多量で苦しみながら死ぬだろう。

『さあ神様!お願い!私をト―――させてちょうだい!』

女の人が叫ぶ言葉を、いつも私は聞き取れない。


こんな、狂っているらしい女がもう片方を滅多刺しにする夢。
よくテレビや漫画で前世の夢を見ると聞いたことがあるが、これがそうなのだろうか。

つまり私の前世は殺した方か殺された方なのか。
どちらも嫌なのは変わりない。

小さい頃からずっと見続けているせいで、人が人を殺すのはもう見慣れてしまった。
それよりももし私が人を殺すようなことになっても出来るだけ急所を狙って早く死なせてやろうと、不謹慎なことを思うようになった。

……これらはあくまで夢の中の話なのだけど。





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