家庭教師リボーン


押しつけられた風紀の仕事とお飾りな生徒会の仕事が終わり、夕焼けの中を歩いていた。
もうすぐ球技大会があるのでいつもより仕事が長引いたのだ。

「ただいまー」

ポストを確認して、家に入る。
あったのはスーパーの安売りの広告や母親宛ての手紙だけ。

「なっちゃん、おかえりなさい!」

いつもと変わらない、いや、いつもより少し明るい笑顔で母がリビングから出てきた。
なぜかはしゃいでいるらしい母に郵便物を手渡す。

「家庭教師の、あっリボーン君って言うんだけどね。ツナの成績があがるまで住み込む契約してるの。ツナの部屋にいるから挨拶してきなさい」

「ふーん、そう。分かった」

随分経済的に切羽詰まった家庭教師なんだなぁ。
それとも普通の家庭教師はみんな住み込みなんだろうか。

しかしまあ、ねぇ。
年頃の娘にまだ若い母、それに頼りない息子の三人家族なのにどこの馬の骨か分からない男をを居候させるなんて。

母の考えていることは分からない。
そう思いながら階段を上がり綱吉の部屋をノックする。

「綱吉?」

開けられた先にいたのは綱吉ではなく、赤ん坊だった。
しかもスーツを着てボルサリーノをかぶっている、赤ん坊。

「は?」

もしかして噂の家庭教師の子供だろうか。いやしかし……

「沢田夏実だな」

「えーと、ボク?」

「お、おい、リボーン!」

「リボーンて……」

たしか家庭教師の名前だったはずだが、もしかしてこの赤ん坊が家庭教師なのか。
赤ん坊に教わらなければならないほど綱吉は頭悪かったの?

「ちゃおっス。俺はリボーンだよろしくな、夏実」

「ああ、うん、よろしく」

赤ん坊なのにポーカーフェイスでニヒルに笑う。
しかも、大人びている。

私はよろしくしたくない気持ちを抑えて差し出された小さな手と握手を交わす。

くらくらするのはきっと体調が悪いせいだと、そう決め込んでまだ騒いでいる綱吉の部屋を後にした。




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