友人と一緒


書類を見ながらこの一年間のことを思い出していると、ふと今朝の話が蘇ってきた。

「ねぇ雲雀」

「なに」

先ほどの私の言葉を聞いて真剣に部屋を移転しようと考えている雲雀に疑問をぶつける。

母が朝言っていた、アレだ。

「雲雀って家庭教師とかつけたことある?」

「……ないけど」

「ふーん」

確かに、雲雀は意外に頭も良いしいらないのかもしれない。
そう結論付けて、私はソファに礼儀正しく座り直し、本格的に書類に取りかかった。

そして、無言の時間が訪れた。
副委員長である草壁を除く風紀委員がいれば、冷や汗をかいて固まるレベルの沈黙だが、私にはとてもそうとは思えない。
彼と二人でいる空間はなかなか好きだと思う。

「応接室はどう?」

「はぁ?」

雲雀の突拍子な言葉に思わず女の子らしからぬ声が漏れた。
あ、書類の判子場所ズレた。

「新しい風紀委員室だよ」

そんな私を無視して雲雀は話し続けた。

「丁度、僕もここは不便だと思っていたんだよ。遠いしね。応接室だと職員室も校長室も近いし、見回りにいきやすい」

委員会の部屋を応接室にだなんてそんなこと出来るわけないだろうと、普通は思うが、こいつは普通じゃなかったんだ。
雲雀の意見を求める、心なしかきらきらした目を見て、私はため息を吐き、口を開いた。

「雲雀の好きにすればいいんじゃないの」

「会長の許可は貰ったからね」

彼はニヤリと笑って、校長室に繋がる電話を手にとった。

私が雲雀に意見することはあれど楯突くことなんてないのを知っているはずなのに。
それでも一応私の意志を聞いてくれる友人にくすりと小さく笑みをこぼす。

ついでに生徒会室も併用にさせてもらおうか。
といっても生徒会には会長一人しかいないのだけれど。

そんなことを考えながら、再度書類整理に取りかかった。




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -