出会い


彼との出会いはそうだ。
ああ、懐かしい。
一年ほど前の入学式の時だ。
これは私が一方的に知っていただけなのだが、ともかく彼はとても強烈だった。

入学式で期待に胸を膨らませている新入生をどん底に叩き起こすような、まだ幼い少年にしては低い声でこう言い切った。

「――僕の名前は雲雀恭弥。今日から僕がこの学校の風紀委員長だ。風紀を乱したら誰であろうと咬み殺す。以上」

その時入学式に出席していた母に言わせると自主性を養うためにだそうだ。
いや、確実に自分の意志で脅してただろうと私は思う。

雲雀恭弥という人物が小学生の頃から、風紀の名の下に暴力をふるっていたのは知っていたがまさか同じ学校で同じ学年だとは知らなかった。
幸いにもクラスは違ったので入学式以降会うことはなかった。


それから雲雀は宣言したように並中の不良を彼曰く“咬み殺”し、風紀委員長にして不良の頂点に君臨した。

私はクラスメイト伝いに現実味のないそれをまるで物語のように聞いていた。
接点なんてまるでなかった。


なのに地味に勉強が出来て、地味に運動も出来て、地味にリーダーシップがあった私は一年にして生徒会長という名目で雲雀への生け贄として捧げられてしまったのだ。
断るという手もあったのだが、担任と教頭と校長がそろって頭を下げてきたら頷く他ない。

理不尽だ、なぜ私がと思いながら、彼のいるらしい第三会議室の前に立った。

恐る恐るノックをして入ると、噂の雲雀恭弥がいた。
そして意外にもすんなりと部屋に入れて、私を生徒会長に認めた。

今や誰もが恐れる風紀委員長の話はこうだった。
彼は困っていたらしい。
風紀委員会のオツムの弱さに。
風紀委員会はそれこそ雲雀を崇拝する不良しか所属していないので力仕事は難なくこなせても書類などは点でダメだった。
そこで成績優秀な私、沢田夏実に目をつけたそうだ。

聞いた時はなんとまあ、と思いはしたが意外にこれが楽しい。

それに私は元々淡白な性格できゃぴきゃぴの女の子とあまり合わなかったのだが、雲雀を崇拝する不良、特に草壁君は仲良くなることが出来たと思う。
並中では風紀や生徒会の名で大概はなんとかなるし、仕事は多いが忙しくしている方が私の気質にあっているようで随分有意義な生活を送らせてもらっている。

そして雲雀とも、群れさえしなければ多少常識的に喋ることも出来た。

ひょんなことから雲雀がハンバーグ好きを知り驚いたが、私が作ったハンバーグを平らげてくれたりしたのは嬉しかった。

一年間、とても充実した毎日だったなぁ。

そして二年生になった今、私は生徒会長兼風紀委員会の雑務担当兼風紀委員長の友人という位置に就いている。




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