今度の日曜の祭りこねえ?

私の携帯のメールボックスにそんなメッセージが受信されたのは夏休みに入って二日目のことだった。蝉のけたたましい鳴き声によって徐々に夢から現実に引き戻された私は無意識に枕元の携帯へ手を伸ばした。メールが一件入っていたので受信ボックスを見ると倉間くんから先程の内容が記されているメールが届いていた。受信履歴の時間を見てみると1:24と表示されている。夏休み前は部活で疲れているからなんて言って11時には寝てるとか言っていたのに、倉間くんも夏休みが始まって浮かれているのかななんて思った。
カーテンの隙間から漏れる朝日の光を疎ましく思いながらもそりと横たわっていた体を起こしてもう一度携帯を見た。今の時間は9時すぎだ。小学生から変わらないいつも通りの夏休みの起床時間である。夏休みは毎日早起きしてランニングをしてから優雅なブレイクファストを嗜むんだぜ!なんて誰かが言っていた気がするけれど、その人も恐らく今頃気持ちよく眠っているのではなかろうか。

さて、話を戻して倉間くんのメールである。日曜日とは今日が金曜日であるので、必然的に明後日ということになる。そういえば家近くの電柱にお祭りの宣伝が貼ってあったような気がしないでもない。昨年は受験でお祭りなんて行く暇がなかったので今年は行きたいなあと密かに願望を抱きつつもどうせ行動に移せないだろうと思い忘れかけていた。
お祭りと脳内で復唱するとそこからどんどんりんご飴、やきそば、かき氷、と連続的に様々な食べ物が浮かんできてしまって、もうたまらなくなってきたので、私は急いで倉間くんにイエスの返事をしようと返信画面を開いた。もうお祭りなんて季節なんだなぁ。お祭りには浜野くんと速水くんも来るのだろう。射的を発見して、おいパシリちょっとこのヨーヨーと焼きそば持ってろとか言って幼い子達に囲まれながら張り切って射的に望む倉間くんが安易に想像できて、こんな風に予想が立つくらいに仲良くなっていたんだなぁなんて口を綻ばせたりしてしまった。
返信画面が現れ、いいですよ、と本文の欄へ打ち込むもこれでは上から目線だとブツクサ言われそうだなと思いすぐ消し、真っ白になった本文の欄に改めて行きたいです、待ち合わせなどどうしましょうか。と打ち込み、送信ボタンを押した。

携帯を枕の横に置いて、まだ微量に残っている眠気に身を委ねて起こしていた身体をどすんとみっともなく横たえてしまった。ふわふわしている意識の中で、ついこの間プールの見学でひとりぼっちだったのを思い返す。あれからなんだか元気がいまいち湧いてこず、人と話していても受け答えが生返事になってしまったりご飯もチビチビともったいぶるように口に含み、それをなかなか飲み込めず食事が進まない、などという情けない生活を送っていてどうもセンチメンタルになっていた。
それもあってか、倉間くんからメールが来たときはなかなか嬉しかった。いつも一緒にいるけれど、倉間くんと遊ぶなんてことは下手したら初めてのことであるし、何より夏休みに倉間くんと会えるだなんて思っていなかったから。
とそこまで考えてから、ここまで倉間くんに依存してしまっている自分の存在に呆れもしたし、恥ずかしくも思った。戻りつつあるもやもやを遠ざけるために瞼を閉じて、意識が沈むのを感じながらゆったりと二度目の眠りについた。夏休みの二度寝というものは、宿題の息抜きにと母が作ってくれるホットケーキと同じくらいに価値のあるものだと私は主張する。



131226 / なつやすみ