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ギド戦から約2ヶ月。

「日程は任せるからな」

「ああ」

「本当に一戦だけでいいのか?別に全員相手しても構わないのに」

「様子見だろ?ビビりだよなー」

「慎重だといってほしいね」

200階の受付で用紙に書き込むルーシャの後ろにはゴンたち三人と、そして今回の彼女の対戦相手が並んでいた。

「じゃあこれ以上私たちにつきまとうなっていう約束、分かってるな」

「大丈夫だよ、ちゃんと守るさ」

「言っとくけど私手加減するつもりはないから」

「ふーん、つい最近ここに来たばかりの新人の割にはずいぶん大きな口を叩くね」

ギド、サダソ、リールベルト。
彼らはゴンが念修行を再開したその日に対戦を迫ってきた。ゴンがギドに敗れてから、彼らはこちらをいいカモになると判断したようだ。
しかし今回は、二人共ウイングから戦闘日を指定されており、勝手に彼らと戦う訳にはいかない。
だからといって放っておくと、恐らく是と言うまでずっとこの三人はゴンたちにつきまとうだろう。それはそれで鬱陶しい。
そこで、ちょうど予定も空いていたルーシャが代わりに戦うことになったのである。

「いつでもOK」の欄に丸をしてから、ルーシャは後ろを振り返って口の端を持ち上げる。「じゃ、よろしくな」と軽く手を振り受付を後にした彼女の背中は、目に見えてうきうきとしていた。
彼女に続き、ゴンの部屋へと向かうキルア、ゴン、ズシの三人。修行が終了した後、今日の復習をする予定だったのだ。

「ルーシャ、本当に戦い好きなんだね……」

「ッスね…」

「当たり前だ!」

前を歩いていたルーシャが気合いの入った声で振り返る。やる気満々のその顔は、いつも気だるげな彼女にしては、実は中々珍しい表情だった。

「念を使って戦う機会なんて最近全然なかったんだぞ!そりゃはりきるだろ!」

「ルー姉のバトル好き、なんか益々悪化してねェ?」

「悪化ってなんだ悪化って」

そのやりとりの間に四人はゴンの部屋へと辿り着いた。
鍵を使って部屋を開けると、備え付けられたテレビに早速戦闘日が映し出される。

「明日ッスか……」

「いきなりかよ」

「頑張ってねルーシャ!オレ達見に行くから!」

「ああ!楽しんでくる!」



□□□□



『さぁ本日のメインイベント!
ギド選手対ルーシャ選手の一戦が始まります!!破竹の勢いでゴン選手、キルア選手と共に勝ち上がって来たルーシャ選手!
対してギド選手は先日ゴン選手との一戦で勝利をおさめております!!ゴン選手の敵を彼女は果たすことができるのでしょうか!?』

耳を塞ぎたくなるような歓声に包まれた闘技場。その中心に設置された白いタイル張りのリングは、スポットライトを浴びて明るく照らされている。
その光の中へと、観客の目を集めながらルーシャは足を進めた。
髪を結い、上着も脱いで動きやすい格好をしている。手には、今まで全くと言っていいほど使うところを見たことがなかった刀が。

「これ使うのもそういや久しぶりだっけか……」

そう呟きながらリングへ上がるルーシャ。途端に観客の声は倍ほどに膨れ上がった。鼓膜を震わせる騒音に顔をしかめながら、彼女は正面へと視線を向ける。対戦相手――――ギドは既に対戦開始位置についていた。

「……どうせなら能力が分からない他の二人のどっちかが良かったんだけど」

「誰でもいいと言ったのはそっちだろう」

ルーシャがそれに肩を竦めている内に、審判が歩み出る。

「ポイント&KO制!時間無制限一本勝負!
――――始め!!」

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