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あれから直ぐに床につくため、すぐさまルーシャは受験生控室に戻った。

「うわ、ムサッ!」

しかし目に入った光景は、男、男、男。
汗臭さと男臭さが充満している控え室で眠るのが我慢ならない、というほどではないが、今の状態の彼女には酷である。

「う、」

「◆」

それに加えて先程の騒動を起こした張本人までその部屋にいたのだから、遠く離れたラウンジまで彼女が逃げて来たのは仕方ないと言わざるを得ないだろう。
覚束ない足取りで人気がないラウンジまでやって来たルーシャは一番端のテーブルに突っ伏し、ものの数秒で意識を手放した。



□□□□



船内放送により、私はテーブルから体を起こした。どうやら次の試験会場に到着したらしい。固まった肩を軽く回しながら出口へと向かい、外の光景に一言。

「空が…………綺麗だなァ」

「ルーシャ……気持ちは分かる」

「ドンマイ、ルーね……ルー」

うん、もうね、背中が痛い。
他の受験生たちと合流したときからブスブスと突き刺さってくる気持ち悪い視線。その主はもう分かってるからそっちに顔を向けたりしない、絶対。
なんなんだよこの常時ロックオン状態。突き刺さるどころか視線に串刺しされてるよ私。

「クク……◆」

面白がってる。面白がってやがるアイツ!!!
と、ひとしきり気持ち悪がった後でもう私は吹っ切れた。気にしたって仕方がない。次の試験の説明に集中しよう。そこでようやく私は今自分が降り立った景色をしっかりと見た。

私たち受験生が来たのは『トリックタワー』と呼ばれるかなり高い建物。見たところ窓も入口もない。三次試験は72時間以内にこのタワーの下まで降りること、だそうだ。
一人、えと……何番だっけか……まぁいいや、受験生の一人が壁づたいに降りようとしたみたいだが、空から飛んできた大きな鳥に襲われていたのを見た限りでは、外から降りるのは難しそうだ。たぶん何か隠し扉とかがあるんだろう。

「ルーシャ!」

床を念入りに調べている最中にそう聞こえたゴンの声。彼らの方へ駆け寄ると、そこには分かりやすい隠し扉が合計六つもあった。ここからタワーの中へ入れそうだ。
それぞれ入る扉を決めて、私たちは向かいあう。

「じゃあまた下で」

「私だけ離れてる気がするんだけど……」

「気のせいじゃない?」

「嫌ならこっちにすればいいじゃん」

「……いや、いいやここで」

「そうか。それでは皆、三日後下で会おう」

「ああ。じゃあ行くぞー……1、」

「2、」

「3!」

合図と共に五人は一斉に下へと降りた。



□□□□



「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

「ずいぶん短い別れだったな……」

「まぁいいじゃねェか全員一緒なら」

結局降りた部屋は一つに繋がっていた。三日間の別れは叶わなかったようである。その事実に気の抜けた様子でゴンとキルアがへらりと笑った後、安心したのも束の間、クラピカの声に全員がお互いを見渡した。

「いや、全員ではないようだ」

「え?」

「あ……」

そこにいるのは、ゴン、キルア、クラピカ、レオリオの四人。

「……ルーシャが……」



□□□□



「……よっ、と」

とん、と音をほとんど立てずに軽く地に降り立ったルーシャ。暗い道が彼女が降りたと同時に蛍光灯の灯りに照らされる。

「え?もしかしてハズレ?」

ルーシャの目に映ったのは石造りの殺風景な壁。通路は少しいったところで行き止まりになっていた。少し不安になりながらも突き当たりへと歩を進め、そこまでいって彼女は安堵の息を吐く。

そこにあったのは、穴。
一瞬では見つけられなかったが、直径1メートルほどの円形の穴が床に空いていた。どこまで深いのか石を投げ込んでみたが音もしない。

「こりゃ深いな………あ、もしかして下まで直通か?」

恐らくここから下へ降りろということなのだろう、穴にはご丁寧にも梯子が据え付けられていた。その梯子につかまり、彼女は暗い穴へと沈んでいった。

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