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「もう、いいだろ……?」

「まーだ◇」

「っ……!!いい加減に、しろよ……!」

「キミのこと気に入っちゃった◆」

「だからって、こんな――――こんな縛り付けなくていいじゃんか!!さっきから超痛いんだけど!!」

場所は変わり、二次試験会場。
ヒソカは到着してからまずレオリオを近くの木の幹に持たれかけさせ、それから一次試験を突破した受験生たちの一歩後ろに下がって、二次試験の開始を待った。ルーシャを文字通り「引き連れ」て。

会場に着けば解放されると思っていたルーシャは、到着してから更に強くなった拘束に抗議の声を上げる。何だ何だと周りの受験生は二人に視線を向けるが、その内の一人がヒソカだということに気がついた彼らは即座に顔を反らし、見てみぬふりをした。
そんな周りの反応に、若干「誰かが助けてくれないか」と期待していた自分が馬鹿だった、と項垂れたルーシャ。
因みに、彼女の土下座せんばかりの勢いの懇願により、帽子はヒソカにより元の様に被らせている。「勿体無いなあ◇」との彼の声もルーシャは華麗に無視を決め込んでいた。

「だって緩めたりしたらキミ、逃げるだろ?」

「当たり前だ。好き好んで変態の隣に並ぶ奴があるか」

「……カタカタカタ」

「…………ヒソカ、知り合い?」

「ああ、ちょっと今協力関係にあるんだ◇」

突然現れた男。
ほぼ気配がなかったためすぐに気づくことができなかったが、ルーシャの顔色は更に悪くなった。
顔中に針が刺してあり、痛々しいことこの上ない。しかも無表情で顎をカタカタと鳴らすその様子は、ヒソカとはまた違う意味で不気味である。
しかし、地下道で感じた念能力者の気配のもう一人はこの男だった。

「彼はギタラクル◇まぁ、試験中だけの名前だけど」

「偽名?」

「そうそ……おっと◆」

質問に答えようとしたヒソカに、凄まじいスピードで何か細いものが飛んでいく。ふとギタラクルを見ると、左手に何本か針を持っていた。

「…………カタカタ」

ばらすな、の意である。

「ハイハイ◆別に喋ったりしないさ」

その言葉に、ギタラクルは針を下ろす。しかしいきなり凶器を飛ばすなどという危険な行為を見たルーシャは、少々驚きつつ彼を凝視した。意外と血の気が多いのだろうか。
ちょうどその時、向こうとも目があったので「あー……ルーシャです、よろしく……」と簡潔に名乗るだけ名乗っておいた。

「……カタカタカタカタカタカタ」

(え?なんかカタカタ多くね!?何言ってんのか分かんないし!!)

名乗った彼女に、比較的大きなリアクションを示したギタラクルは、何を思ったかルーシャに近づき手を伸ばした。

「……!?」

その手が彼女の頭に触れようとした、その時。
重く錆びた鉄の扉が擦れる音が響いた。二次試験の開始時間らしい。
ギタラクルの方に視線を戻すと、ルーシャに伸ばされた彼の手は元に戻っていた。



□□□□



「そういえば、ルーシャはどうした?キルアは会っていないのか?」

「オレがクラピカたちの所に行った時はいなかったんだ。たぶん逃げてると思ったんだけど……」

ゴンとクラピカがゴールに辿り着いたのは二次試験開始直前だった。「もう戻ってこれないと思った」と駆け寄ってきたキルアに二人は先のように尋ねた。ルーシャが到着しているなら既に見つけているだろう。
それに「ああ………」となんとも微妙な返事を返した彼に、二人は怪訝な顔つきで首を傾げた。

「あそこにいるよ。話しかけに行ってみるか?」

「あっ!?ヒソカも一緒!?」

「捕まったのか……」

「そうなんだよ。ヒソカからはさすがに逃げられないみたいだし、オレも話しかけ辛いし。なんかされないといいけど」

「随分落ち着いているな。いつ彼女が殺されるのか分からない危険な状態なのに」

「そんな!!直ぐに助けに――――」

「止めとけ。ルー姉なら大丈夫だ」

そう言い切ったキルアは少し離れた場所にいる彼女に目を向けた。
何やらルーシャは隣にいる彼に向けて怒鳴っている。それに対して怒る様子も見せず涼しい顔で応えているヒソカ。見たところ特に拘束されている訳ではない。
確かにそこまで危険な状況には見えないが、相手はあの殺人狂。何が起こるか分からない。

「大丈夫だって。アイツ、ゴンやクラピカが思ってるよりだいぶ強いからさ」

「信頼しているのだな」

「べ……別にそんなんじゃねェよ。ただ事実を言っただけだ」

そう言ってキルアは背中を向ける。それが照れ隠しだというのは誰の目から見ても明らかで、そんな彼の背中を二人は微笑ましく眺めた。

「あ、レオリオが目を覚ますようだ」

クラピカの声により三人は会話を一旦中断し、レオリオの顔を覗き込んだ。
ヒソカに殴られた頬はすっかり腫れて、かなり痛々しい。目が覚めた彼はルーシャが捕まっていることを聞いてゴンと同じように助けに行こうとしたが、しかし全員で「その怪我でどうしようと言うんだ」と止められたのだった。

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