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追いついたキルアの横には、彼と同じくらいの年の黒髪の少年がいた。声をかけてから彼らの隣に並んだルーシャ。目を合わせると少年はにこり、と屈託のない笑みを浮かべた。

(珍しいな、キルア以外にこんな子供が)

どうやら彼は後ろにいる二人と三人でここに来たらしい。
背の高い背広姿の男が「なんだ、そのガキの知り合いか?」と彼女を見下ろす。心なしか機嫌が悪いのは恐らくキルアのせいだろう。後ろを見向きもせずに走る彼の横からひょっこりと顔を出して、黒髪の少年は無邪気な表情でこちらに話しかけてきた。

「こんにちは!オレ、ゴン!キルアのお友達?」

明るい声で言う少年、ゴン。その子供らしい仕草が微笑ましくなったルーシャは思わず頬を緩める。
今までのびのびと育ってきたのだろう彼の純粋な顔立ちは、このハンター試験では酷く浮いて見えた。険しい顔の男たちと殺伐とした雰囲気の中で、あのピエロとはまた違った意味で周りから孤立している。

(といってもこの子もハンター試験受験生、見たところ基礎体力はそこそこあるみたいだな)

一定のペースで走るゴンは、疲れを全く感じさせない軽い足取りで前の受験生たちに続いている。しかし罠に罠を重ねたこの会場までの道をくぐり抜けてきた辺りは、他の二人ーーーー背広の男と民俗衣装の少女ーーーーに助けられてたどり着いたというところだろう。キルアとは違い、子供らしい純粋さを見せるゴンが、上手くトラップを回避できるとは思えない。

そんな風にゴンを観察している内に、質問にはキルアが先に答えていた。

「違う違う。オレの訓練相手みたいなやつ」

「なんか、改めて聞くと師匠と弟子みたいな関係だな私たち」

「ルーが師匠……!?」

「そんな不満かよ!」

心底嫌そうな顔が此方に向いて、若干の落胆を感じたルーシャ。しかしそれに凹む暇なく、予告なしにかけられたゴンの言葉に彼女は完全に硬直した。

「仲良いんだね二人とも。お姉さんルーっていうの?」

「……?」

「何言ってんだゴン?この黒いの男じゃねぇのか?」

(……………………)

なんとか平常を保ったが、背中には冷たいものが流れる感触がした。ちらりと横を見れば、それはそれは面白そうににやりと笑うキルアの顔。ギリギリ、と握った拳を振り上げそうになったがなんとか留める。
一方沈黙したルーシャには構わずゴンは続けた。

「ううん、この人女の人だよ?声は低いけど身体は細いし、あと顔つきも全然男じゃないもん」

「顔……?ああ、オレからじゃ帽子を被ってて見えねェからな。どれーーーー」

「っ!!」

「っでええ!!?」

キルアにお見舞いするはずだった拳は、憐れにも至近距離で顔を覗き込んできたレオリオへと吸い込まれたのだった。

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