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※この番外編は本編の天空闘技場編終了後と繋がっています。閲覧の際は先に本編を読むことをおすすめします。
オリキャラ視点の話です。












「……だよな!…ルーシャ……!」

ぴたり、と自分の足が止まった。
人も賑わうここ、天空闘技場は厳つい男たちや物騒な獲物を持ち歩いた人間が数多く出歩いている。
そんな喧騒の中確かに聞こえたルーシャ、という名前。僕の足はその名を発した男の方へ真っ直ぐ向かった。

「ちょっと、いいですか?」

「あ゛?なんだお前?」

「ここはあんたみたいなお坊っちゃんが来るところじゃないぜぇ〜?」

派手な服装の二人組はそう下品な笑い声を通りに響かせた。とにかくそれはどうでもいい。今この男が口にした名の事について聞ければ。

「ルーシャ、って子、ここにいるんですか?」

「あ?あぁ、なんだお前ルーシャのファンか?確かにあの女美人だからなー!だがおっかねー奴だぜアイツ。何しろあのヒソカと互角――――」

嗚呼、僕が聞きたいのはそんなことじゃない。気がつけば男の頭を狙い拳を振り上げていた。……あ、ダメだ。余計な殺生は後々面倒だし、人道的にも誉められたものではない。その感情が僕を思い留まらせ、なんとか男の頭を潰すことなく拳は横に反れた。
壁に勢いよくめり込んだそれを驚愕の表情で見つめる男たち。

いけない、怖がらせてしまったらしい。

手を引っこ抜き、慌てて笑みを作って男たちを宥める。ぶるぶると震えてはいたけれど、逃げ出すことはなさそうだ。

「それで、そのルーシャは今何処に?」

「い…今は、もう闘技場を降りて、どっかいっちまったよ!これ、これでいいな!?」

「……そうですか。ありがとう、助かりましたよ。引き留めてごめんなさい」

一目散に駆けていく男たちに出来るだけ誠意を伝える為、手を振って見送る。暴力って本当はダメだって分かってるんだけど、ルーシャのことになるとついつい頭で考える前に手が出ちゃうんだよね……直さなきゃな。
ふと周りを見回すと、人々の視線が僕に集まっていた。壁が割れる音で驚いたんだろう、申し訳ない気持ちもあったので軽く会釈してからその場を足早に去った。

「ともかく、ここもハズレか……もう少し来るのが早ければ会えたのになあ」

誰に言うでもなく独り言を呟いた僕は続けてため息を吐いた。
僕がかけていたルーシャの念が解けて約半年。探し回っているものの、一向に彼女は見つからない。
元から僕の情報収集能力が低いせいもあるんだよな。クモに頼るって手もあるけど貸し作るのは嫌だしな……念をかけた対象者の居場所を特定できるようにしておけばよかったなぁ。

今頃、ルーシャは何をしているんだろう。

男嫌いが念によるものだと分かってどう思っただろう。そしてその念を解いた人物のことも気になる。もしその人に会ったら一番に……八つ裂きにしてやろう。
嗚呼、こうしている内にもルーシャに汚ならしい男たちが近づいていたら……!いや、きっと大丈夫。あの子はそんなに気休く他人を近寄らせることなんかしないはず。
少し興奮しかけた頭を冷やす。それよりルーシャの足跡を見つけたのは確か。ここから行き先を辿って行けば……あ。



□□□□



「はぁっ、はぁ……!な、なんだアイツ、闘技場の闘士か!?」

「いや、あ、あんな美形なら目立つだろ。たぶん今から選手登録にでも行く奴―――」

「あ、いたいた。あのー、度々すいませーん!そのルーシャがどこに行ったか知りませんかー?」

「ひ、ヒィィィ!!」

「だ、大丈夫ですって!別に何もしませんから!落ち着いてください!!」



□□□□



「………そうですか、ありがとうございました」

その男は言葉通り、俺たちに特に危害を加えることはなかった。情報を持っていないからと殺されることも特になし。見た目は小綺麗で、王子様と例えるとしっくりくるような整った容姿だったが、俺たちに攻撃してきた時のあの顔はたぶん当分忘れられねぇだろう。
それ以外は本当に普通の、友好的な青年だったが。

「な、なぁ……」

隣にいた仲間が、なんの好奇心か奴に質問を投げ掛けた。それは確かに俺も気になっていたことだった。

「お前、ルーシャとなんか関係があるのか?」

おそるおそる聞いた仲間だったが、拍子抜けするくらい嬉しそうに、その青年は笑顔で答えた。

「可愛い妹なんです」

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