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とある場所のとあるキッチン。
使い古されたテンプレから始まるこの話は、毎年世間を騒がせるイベントとしても定番中の定番だ。
そのイベントに毎年のように便乗すべく、エプロン姿でキッチンに立つルーシャはたった今全ての作業を終え、一息ついた所だった。目の前に並ぶ甘い匂いのモノをおもむろに一つ口に運び、そして一言。

「よし……」


〜主人公組四人の場合〜


「おーい、いるかー四人とも」

「いるに決まってんだろ呼び出されたんだから」

場所は私の住むハンター協会本部の自室。
来客があった時に、と応接室として師匠から与えられている部屋だが、まあ私をわざわざ訪ねてくる人間なんかそんなにいない訳で、四人が来る30分ほど前はここは第二の書庫と化していた。
因みに本当の書庫には、今現在ゲーム機、漫画、テレビ、PC、etc……がすしづめ状態に押し込められている。ここにあった分を移動させただけだから当たり前だが。

そんなわけで応接室は綺麗さっぱり、雰囲気の良い穏やかな空間へと変化していた。

そこで待つ四人に、たった今トレーを片手に部屋の扉を開けた私は遅くなった、と軽く詫びた。クラピカとレオリオは大人しくソファに座っていたけど、ゴンとキルアは二人して遊んではしゃいでいた。広い部屋だからって暴れてそこの壷割らなきゃいいが。

「何だキルアその態度は。せっかくいいものやろうと思ったのに」

「いいもの?いいものって何?」

「ゴン、お前は本当に鈍い奴だな。よく思い出してみろ今日の日付を」

ゴン以外の面々は今日呼ばれた理由は元から分かっていたようで、レオリオなんか忙しなく目を泳がせている。あんまりそわそわしているからクラピカに馬鹿にされていた。

「今年は知り合いとか増えたしバレンタインのチョコは沢山作って配ろうかと思ってな、ほら」

「チョコ!?やったあ!」

「よっ!待ってましたァっ!!」

ゴンとレオリオはそう言って私に笑顔を向ける。一番楽しみって顔してたのはレオリオだけど。一方でキルアは毎年恒例のことなので特に驚くことも喜ぶことも無かった。クラピカも同じく目に見えて嬉しそうにする様子はない。本当に対照的だな、この四人。

「ルー姉のチョコはそりゃ毎年楽しみではあるけどさーわざわざ呼び出さなくっても」

「何が不満なんだよキルア。オレなんかしばらくチョコなんて貰――――ゴホゴホッ!!」

「そこで誤魔化しても遅いぞレオリオ。恥を晒したな」

鼻で笑うクラピカに怒り、もしくは恥ずかしさで顔を真っ赤にしたレオリオは、じゃあテメーはどうなんだ!!と怒鳴った。……レオリオ最近貰ってなかったのか。性格を考えると知り合い多そうなのにな。

「私はそのような世俗的なことには興味がないのでな、受け取ったことはない」

「“受け取ったことはない”ってことだから一応貰ってるんだね」

「しかもありゃ言い方からして本命のだぜ」

「中途半端に受け取っては逆に相手に失礼だろう」

「くっ……!!」

あえなく惨敗、レオリオ。
項垂れた彼の上からスポットライトが当たってる気がして反射的に携帯のカメラを構えそうになってしまった。

「ま、今年は私がやるから良いじゃん。はい」

「うおおおおっ!!サンキュールーシャ!!」

「わー美味しそう!なんかすっごく本格的!!」

「毎年、というより料理は基本的に凝ってるよなールー姉は。面倒くさがりのくせして」

「最後の要らねーからな?はい」

「サンキュー!」

なんだかんだ言っていても実物を目の前にするとキルアの表情は緩んだ。そこらへんはやっぱり子供だ。二億を全てお菓子につぎ込んだ究極のお菓子好きというのもあるんだろうけど。

ところで……

「ところでクラピカ、お前はいるのか、いらないのか?」

「いらねーよなァ?“世俗的なことには興味ない”んだからな?」

あ、私が言おうとしたことそのまま言われた。さっき馬鹿にされた分、と言わんばかりにレオリオはそう攻め立てるが、クラピカはクラピカですんなり「頂こう」と差し出したチョコを受け取った。

「オイ、さっきと言ってること違うじゃねーか」

「せっかくの好意を受け取らない訳にはいくまい。本命と義理ではまた違うだろう」

「アレ、てことはクラピカって義理は貰ったこと……」

「「「「!!」」」」

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