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「え?“レン”?」

「ああ。ルー姉ならなにか知らないかと思って」

ルーシャたち三人は100階に到達し、個室を貰った。
キルアが言うには待遇が良くなるこのクラスを死守しようと様々な手を使って負けまいとする連中が多いらしい。そんな奴らと当たると厄介だ……しかしそう話していた彼の忠告は、圧倒的な戦力の差で勝ち上がっていく二人には無用な心配だった。
順調に上へ上へと勝ち進んでいく中、ふとゴンとキルアが頭に浮かべたのは“レン”という不可解な能力を使うズシのことだった。

「……キルアがすごいいやな感じがしたっていう、レンって一体何だろうね…」

そのゴンの台詞をきっかけに、先の問いがルーシャに向けられたのである。

「私に聞くよりはズシに直接聞いた方が良いんじゃないか?」

「……あ、確かに」

「早速行ってきたら?私はちょっと出かけてくる」

「え?何処行くの、ルーシャ?」

今現在いるのは闘技場で各一人ずつに与えられた個室。
三人はゴンの部屋に集まってのんびりとくつろいでいたのだが、何を考えたのかルーシャは椅子から立ち上がって部屋を出ていった。ゴンの問いにも「ちょっとな」と思わせ振りな返事をして。

「何だろ……?」

「ほっとけよルー姉なんかさ。それより、早くズシのとこに行こうぜ!」



□□□□



二人と別れた私は、今闘技場のエレベーター内にいた。向かっているのは上――200階だ。
4年前、シルバがキルアに『200階まで』上ってこいといった理由が気になったのだ。まあ大体想像はついてるけど……一応念のため。
目的地へ到着したエレベーターの音が響くのと同時に扉が開いた。

「やっぱりか……」

エレベーターから降りながら、そう呟いてロビーを見渡す。円を使わずとも感じられるこの階とここ以下の階の気配の違いに、思わずにやりと口の端を釣り上げた。
今までほとんど居なかったのが不思議なくらいだったんだけど、これで納得がいく。

200階にいる闘士は恐らく全員が念能力の使い手だ。
キルアがまだ念を修得していないからここまでとシルバは制限を設けたんだろう。

「失礼」

「はい?」

え、誰。
いきなり話しかけてきた男に、私は眉をひそめつつも顔を上げた。
何が目的なのかは分からないが、私が訝しげにしているにも関わらず彼はにっこりと好意的な笑顔を浮かべた。ローブみたいな服に腰辺りまである髪。けっこう整った顔が特徴的だ。
男が話しかけてきた瞬間、ロビーにいた他の闘士の殆どの視線が私たち二人に向いた。
何だろう、やっぱりテレビで6戦連続無傷の勝利ー!とか騒いでるから目立ってるんだろうか。
それとも注目されてるのはこの男の方か。

「貴女は確か、ルーシャさんですよね?まだ200階には上がってきていないはずですが……何故ここへ?」

「えーと、ちょっと見学に…」

「見学?そんなことなどせずとも、貴女なら直ぐに上ってこれますよ。頑張ってくださいね」

「はぁ……ありがとうございます」

「私は200階クラスの闘士のカストロと申します。ここへ来たら私ともお手合わせくださいますか?」

「ええ……是非」

とりあえず笑ってそう言うと、満足そうに頷いた後、男――カストロは「ではまた」とローブを翻して去っていった。適当に話合わせて是非、とか言っちゃったけど大丈夫かな。
実際彼は200階クラスでは相当な実力者らしく、周りで見ていた人間からは「カストロと戦うなんて、あの女死ぬぜ」などと声が聞こえてきた。

周りの声は無視だ無視。たぶん大丈夫だろ。
そのことについて考えるのを止めた私はさっさとエレベーターへ乗り、自室のある階のボタンを押そうと手を伸ばした。
途中で夕飯のことを忘れていたため売店に寄り道してから再び自室へと戻ると、

「あれ、どうしたんだ二人とも」

部屋の前にはゴンとキルアの姿が。見たところ私を待っていたらしい。

「ルー姉……“ネン”って、何なんだ?」

至って真剣な顔でそう言ったキルア。確か彼らは同じことをズシに聞きに行ったはず。「教えて貰ったんじゃないのか?」と私は尋ねたが、否定とも肯定とも取れない微妙な顔をした二人にますます不思議に思う。
何でも、ズシの師匠であるウイングにネンを教えてもらうように頼み込んで、簡単に内容の説明は受けたらしい。じゃあ良いじゃんと私が返すとキルアは首を振った。

「あれはウソだ。意思の強さとかそんなレベルのものじゃない」

「ウソ?……それ、どんな内容?」

聞いたところによると、どうやらウイングは門下生でないものに良く説くハッタリの“燃”の方を彼らに教えていたようだ。困るな……二人の実力があれば直ぐに200階までクリアしてしまう。念を知らないものが念使いと戦えば――――。

「ちょっと行ってくる」

「え?また?」

「何処にだよ」

「ウイングさんのとこ」

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