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ウイングと別れた四人は、それぞれファイトマネーを貰うべく50階の受付に並んだ。缶ジュース一本分の152ジェニーという中途半端な賞金だったが、キルアによると50階で勝てば5万は貰えるらしい。

「けっこう貰えるっすね」

「100階なら100万くらいかな」

「!!」

「150階を越えるとギャラも1000万を楽に越す」

「へースゴいな、そんなに出るのか賞金。……ん?ちょっと待て、キルア前に200階まで行ったって言ってたな?そのお金は?」

ルーシャの問いに残ってるわけないじゃん四年前だぜ?とさも当たり前のように答えるキルア。

「全部お菓子代に消えたっつの。たしか……190階クラスで勝った時は2億くらいだったかな」

「2億……」

その数字に唖然とする三人。いくら四年の月日がたっていても2億を、しかもお菓子代につぎ込むとは信じられない金銭感覚である。
まあ実家が裕福だということもその感覚に一役買っているのだろうが。
そんな三人に構わず、キルアは控室の扉を開いた。

「早く行こーぜ。オレ達前の試合でダメージなかったから、きっと今日もう1試合組まされるぜ」

その台詞と共に中に入ると、選手達の鋭い視線がゴン達につき刺さった。女と子供三人の組み合わせは男だらけの闘技場ではやはり目立つのだろう。
そんな中でも遠慮の欠片もなく「この階程度なら楽勝」と言いきるキルアの声に、周りから冷たい視線が向けられる。
もう少し小さな声で……と思いつつズシは冷や汗をかいた。

『キルア様』

「お、お呼びだな」

『ズシ様、57階A闘技場へお越し下さい』

「あら」

しばらくして放送で名前が呼ばれたキルアは、ベンチから腰を上げて闘技場へ向かう準備をし始めた。
しかし運悪く、その試合相手に当たったのはズシ。緊張してぺこりと頭を下げる彼に次頑張れよ、とキルアは勝つ気満々で軽く手を上げた。

「60階ロビーで待ってるからな」

ゴンとルーシャにそう声をかけてから、キルアはズシと並んで闘技場へと向かう。なんともいえない気まずさをズシの背中から感じたルーシャは苦笑した。
ゴンも同じ気持ちだったようで乾いた笑いを漏らす。

「はっきり言うなーアイツも」

「でもズシには悪いけど、オレはキルアが勝つと思うな……」

「同じく」

『ルーシャ様、トルト様、54階B闘技場へお越し下さい』

「あ、呼ばれた。じゃあゴン、私もちゃんと勝ってくるしお前も勝てよ」

「うん、頑張ってねルーシャ」

ゴンに見送られ控室を出たルーシャは指定された闘技場へと向かった。

1階より更に大きな声援を受けて顔をしかめながらリングへと上がる。相手は特に強い訳でも無く、彼女にしてみれば赤子同然のようなものだった。
暑苦しい闘技場からさっさと立ち去りたかったルーシャは、一発KOで勝利し60階へと上がった。

ロビーには既に試合を終えたゴンの姿が。嬉しそうにファイトマネーを見せてきた彼に、ルーシャも受付へと向かった。
同じ6万を手に戻ってくると、ロビーにはキルアの姿もあった。

「お疲れ。どうだった?キルア」

「ああ、ルー姉。ちょっと手こずっちまった」

キルアの表情は勝ったというのに何故か固い。ズシが思ったより強かったのだろうかと尋ねてみると、いや全然、と彼は即答した。
しかし不安感を抱くようなその表情に違和感を感じたルーシャは、じゃあ何があったんだと追求した。

「……あいつが構えを変えたとたん兄貴と同じイヤな感じがしたんだ」

(嫌な感じ……って、念か?)

「何か……わかんないけどヤバイ感じ。あれきっと何かの技なんだ! あいつの師匠が“レン”って言ってた」

そこでキルアは決心したように二人を見てこう言った。

「ゴン、ルー姉…オレちょっと予定を変えるぜ……最上階を目指す!」

「うん!」

「……りょーかい」

それは念能力というもので―――と打ち明けたい気持ちを抑えながら、ルーシャが頭に思い浮かべたのは先程会った眼鏡の男――――ウイングの姿だった。

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