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ゾルディック家を出てからしばらく。

「ハンター証使わなかった?なんで?」

「本当にガンコだよな〜こいつ」

ハンター証を使えば観光ビザ無しで外国滞在できるのに、ゴンがそれを使わなかったことが判明した。彼が言うには、“やること全部やってから使いたい”……正確には、ハンター試験の時にヒソカに借りた借りを返す、とのこと。

「ふーん。……で、ヒソカの居場所は?」

「…………。えーっと」

一同はゴンの計画性のなさに呆れて肩を落とす。彼らしいと言えばらしいが、そうなるとヒソカを探し出すのは非常に困難になる。どうするか……と考えるゴンに、クラピカが言葉を発した。

「私が知ってるよゴン」

恐らく最終試験の時ヒソカが彼に耳打ちしたことが関係しているのだろう。レオリオはそう思い、何を言われたのかと問う。クラピカから帰ってきた言葉は一言、「クモについて」だった。

「ヤツに旅団のことを話した覚えはないから、一次試験の時にレオリオとルーシャとの話を聞かれたか他の誰かが話したか………とにかく"クモ"は旅団のシンボルだ。ゆえに旅団に近しい者はヤツらをそう呼ぶ」

「…………」

ルーシャは四人に悟られないよう息を呑んだ。

「それを知っていたヒソカの情報に興味があってな」

「なるほどな……」

「で、講習の後ヒソカに問いただした」

―――9月1日、ヨークシンシティで待ってる◆

彼はそう言っていたらしい。

(9月1日にヨークシン……というとオークションか?)

もしそこでクモの活動があるなら、思い付くのはヨークシンで行われるオークション。だとするとかなり大それたことを考えたものだ。競売品を奪うと言うことはヨークシンにオークションの為集まるマフィア、そして地下競売を運営しているマフィアンコミュニティー全てを敵に回すのと同義。
しかし奴らならしでかす可能性もある。シルバが掴んだという情報からしても恐らくこれは正しい。

約半年後、クモは動く。

(しかしアイツ……ヒソカのやつ何でそんなこと……。私がクモを抜けたことも知ってたし)

四人がオークションのことについて話している時、ルーシャは一人黙って思考に沈んでいた。

(まさか現旅団員だったりして……そうなると辻褄は合うし可能性はあるな。戦闘狂のアイツのことだから団員と闘りたくて入ってたり。
問題はクラピカだ。
たぶんこいつはヨークシンでクモと接触する、下手したら戦闘に持ち込む気だ。でも念さえ覚えていない今のクラピカじゃ話にならないし会った時点で即死。……どうする?今それは言えないし……)

心源流の師範――――ネテロ会長の弟子であるルーシャは、協会の方針に逆らうことは許されない。つまり裏ハンター試験がある以上、不用意に念の存在を漏らしてはならないのだ。しかも念封じの紐を解いてもらうときに彼女はネテロにまたしても忠告(という名の命令)を受けた。

『ルーシャよ、これからはあの四人と一緒に行動するつもりか?』

『ええ、まあ。基本的に好きにしますけど、アイツらと連絡は取り合うと思いますよ』

『なら言っておこう。あやつらはまだ念の存在を知らん。いづれ気づくか裏ハンター試験官に行き合うかするじゃろうが、その前にお主自身の口から念を明かしてはならんぞ』

(一応これもハンター試験の内だからな、私も師匠の言葉には逆らえない……というかいつどこで私の話を聞いてるか分かんないからな、あの地獄耳)

心中で軽く悪態をつくルーシャ。しかし心情は穏やかではなかった。相手はクモ、幻影旅団。いくら今から念を覚えたとしても、奴らに対等に立ち向かえるだけの戦力など到底持てるはずがない。
そしてそれ以上に、ルーシャには不安要素があった。

(私の過去も、奴らと接触すればバレる確率が格段に上がる。半年たつまでに自分から明かすか奴らにバラされるか……)

仲良さげに話す四人から孤立したような感覚――いや、実際その通りだろう――にルーシャは拳を握りしめた。

「じゃ、私はここで失礼する」

クラピカが不意に立ち止まり四人にそう告げた。これからは本格的にハンターとして雇い主を探す、とのこと。
クラピカの目的は旅団の他に、仲間の目の回収もある。オークションに緋の目が出される可能性もゼロではない。そのためにも金持ちと契約し、オークションに参加することで一刻も早く緋の目を取り戻すそうだ。

「さて……オレも故郷(くに)へ戻るぜ」

「レオリオも?」

ハンター証を手に入れたため、高額な大学の授業料も全て免除になる。彼はこれから帰って存分に医者になるための勉強に励むらしい。

「また会おうぜ」

「ああ」

そこで、五人は別れた。再び会うのは9月1日……ヨークシンシティ。

(あと……半年)

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