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「ルーちゃん!久しぶりねー今まで何をしてたの?ルーちゃんと話せなくて寂しかったのよ〜?」

「お久しぶりです、キキョウさん」

ただいまの現在地、キキョウさん’Sルーム。
アンティーク調で統一された広い部屋の広いクローゼットには、所狭しとドレスやら帽子やら鞄やらが押し込められている。でも服を痛めないように細心の注意を払っているのはよく分かる整頓されたそこは、収納量は多いものの不思議と散らかっているという印象を与えない。そこらへんは流石キキョウさんってところだ。

「相変わらず凄い量の服ですねー。というか増えてますね」

「どれも今年新作のドレスなのよ?」

可愛いでしょう?と嬉しそうに尋ねるキキョウさんにそうですねと同意して、私は目の前の大きなテーブルにある紙の束を見やった。かなりの量が積み上げて……いや、折り重なっていた。クローゼットより今日はこっちの方が散らかっている。
そしてその紙に書き込まれたものに、にやり、と笑みを浮かべて私は頷いた。

「なるほど……今日の用事っていうのはこれですね?」

「そう!!とにかく思いつく限りは書きだしてみた新しいドレスのデザインよ!今日は存分に話し合いましょう!」

「是非!充実した議論にして見せますよ、キキョウさん!!」

がっしと二人で両手を握りあう。
え?私のテンションいつもと違うって?ふふん、それもそのはず、私のオタク趣味に準ずる楽しみが、このキキョウさんとのオリジナルドレスのデザイン制作会議なのだ!
あ、今意外とか似合わねーとか言った奴前出ろ前。

「今日はカルトちゃん用のドレスを考えようと思ってね。いつも着物だからたまには、ほら」

「わ!すっごい可愛い!!ここのレースの色とか良いですねー!」

「あとこんな感じの髪飾りに、」

「おお…」

「靴に、」

「おお!」

「胸にこのリボン!」

「かっ……かわいいいい!!」

「でしょう!全体的にやっぱりクラシカルな雰囲気がカルトちゃんには似合うんじゃないかと思うの。だから古典的だけど綺麗に纏めてみたわ」

「成る程……確かに良く見るスタイルではありますね。それでいて色も形もまとまっていてシックに決まる。良いと思います、でも」

「そうなの。ルーちゃんも思ったでしょう?何かが足りないのよ」

「……そうだ、思い切ってコレでどうですか?」

「あら、全然雰囲気が違うんじゃない、この装飾。一つだけ異彩を放ってしまわなくて?」

「だからです!確かにバランスがいいドレスは古典的かつ良いデザインではあります。しかし!」

ばん!と机を思わず叩いてしまった。衝撃で端の方の紙が落ちる。

「バランスがいいだけじゃつまらない。冒険してみることで新しい発見だってある。これもあえて雰囲気の違うものを組み込むことによって、アンバランスな可愛さを表現するのです!」

「いいじゃない!確かに新しい境地を見出すには持ってこいだわ。でもね、ルーちゃん――――」

……とまあ、これから数時間に渡って激論が繰り広げられるわけなのだが、長すぎるので一応割愛。因みにこの楽しさはゾルディック家ではキキョウさん以外誰一人理解を示してくれない。唯一ミルキがちょっとだけ乗ってくれたこともあったけど(コスプレ服を自作してた時)、私たち二人の話を聞いて直ぐに興味をなくしてどっかに行ってしまった。
本人曰く「コスプレ服を作るのにどんな生地を使えば最適か聞きにきただけ」らしい。面白いのになぁ。

「出来たわ!ありがとうルーちゃん、今日はいつもよりいい話が出来たわね」

「今度はキキョウさんのドレスをデザインしましょうね!」

「期待してるわよ?それに……ここにお嫁に来てくれる件もね」

「え?あーえっと……お嫁はちょっと、」

シルバのやつやっぱり話してくれてなかったみたいだな。しかも完全にもうその気だし。
でもここで曖昧な返事をしたらこの人の事だから恥ずかしがってるのねーとか不安なのねー大丈夫よとか誤魔化されるからな……。
もうきっぱり断ろう。今まで面倒くさがって上手くかわしてきたけどはっきり言わなきゃキキョウさんは分かってくれなさそうだ。

「あの!キキョウさ―――」

「奥様」

「入りなさい。何かしら?」

上手いこと使用人に台詞を被されてしまった。失礼します、と部屋に入ってきた使用人はゴンたちのことをキキョウさんに連絡しにきたらしい。五日も立っていたのに報告が遅れたのは彼女自身がちょうど家を開けていたからだそうだ。

「キルにお友達、ねぇ……」

「…………」

「イルミに聞いたけど、ルーちゃん、あなた確かハンター試験でキルと一緒にいたそうね?」

「はい。……今来ているのはその時に私たちと一緒に試験を受けていた人たちです」

「そう……」

それだけいってキキョウさんは口を閉ざした。キルアが家を出ていくんじゃないかという心配をしているんだろうか、それとも客人をどうするか考えているんだろうか。
彼女の心中は計り知れないけど、イルミと若干考え方が似ているキキョウさんだからどんな行動に出るか分からないのが少し心配だ。やっぱり親子ってことかな、この二人。

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