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「驚きましたよ。二次試験のときにまさか師匠が来るなんて」

「ハンター試験で起こったトラブルは会長であるワシが責任を持たねばならんのは当然のことじゃ」

(だからって試験中ずっと同行する必要はないだろが)

心中で悪態をつくルーシャ。師弟関係ではあるが、彼女はネテロが苦手であった。
もちろん武人として、師としては尊敬しているのだが、気まぐれにふらりと現れてはルーシャをからかい、おちょくり、下手をするとセクハラまがいのことまで働く。二次試験でネテロが上空から降りてきたとき、ルーシャが思い切り顔を歪めたのは言うまでもない。

「さて面接を始めるかのう。まず最初になぜハンターになりたいのか、じゃ」

座布団の上に胡座をかいて座り込んだルーシャ。面接に対する緊張感は欠片もない様子である。最初の質問には呆れた表情で溜め息混じりに答えた。

「師匠が受けろって言ったんじゃないですか」

「ふぉっふぉっふぉっ。それはずっと前から言っとるじゃろ?」

ネテロの弟子として約三年間、ルーシャは武術、念能力、その他様々な修行を重ねてきた。その間何回もハンター試験を受けろと言われ続けてきたのだが、彼女は何故か周りの意見をお茶に濁し、今まで試験を免れていたのだった。

「師匠の傍で協会を見てるとやっぱり……ね。弟子だからっていろいろと厄介な事が回って来そうで嫌だったんですよ。まぁハンターライセンスの便利さに結局は釣られたわけですけど。強いて言うならそれが理由ですね」

「ふむ。ではお主以外の九人で、一番注目しているのは?」

「注目、ですか……。44番はもちろんですけど、405番も気になりますね」

「なるほど。では九人の中で、今一番戦いたくないのは?」

「戦いたくない人なんかいませんよ。戦えと言われれば誰とでも」

間髪いれずに返した答えに、「ま、お主ならそう言うと思ったわい」とネテロはのんびりとした動作で湯飲みを傾けた。以上で面接は終了だそうだ。
ルーシャはありがとうございました、と形式的に一言言って立ち上がり、それからあ、と思い出したようにネテロに小指を見せた。

「これもういい加減とってくれません?一週間も何も出来なくて暇で暇で」

「駄目じゃ。」

「えー念ないと色々と面倒くさ――」

「駄目じゃ。」

きっぱりと言い切ったネテロ。舌打ちをしそうになるのを押さえつつ、ルーシャは仏頂面で応接室を出ていった。



□□□□



「さて諸君、ゆっくり休めたかな?ここは委員会が経営するホテルじゃが、決勝が終了するまで君達の貸し切りとなっておる」

面談から三日後。ネテロは受験生たちを集め、最終試験の説明を始めた。最終試験は一対一のトーナメント形式で行う、ということだ。

「その組み合わせは―――こうじゃ!!」

ネテロのその声に、布に隠されたトーナメント表が姿を表す。一同は息を呑んだ。
トーナメント表には組み合わせに随分と差があった。試合回数が四回ある者もいれば、二回ほどしかチャンスが与えられていない者もいる。
ルーシャの位置は、405番、ゴン対294番、ハンゾーの一つ上。ゴンかハンゾーどちらかが彼女と当たることになる。

「最終試験のクリア条件じゃが、いたって明確。たった一勝で合格である!」

つまりこのトーナメントは、敗者が上に登って行く負け上がりのシステム。そして不合格者はこのトーナメント表の頂点に登った一人だけ。
だがそれにしては組み合わせが不公平すぎる、との声が上がった。

「この取り組みは今までに行われた試験の成績をもとに決められている。簡単に言えば、成績のいい者にチャンスが多く与えられているということじゃ」

(ふーん……)

それを考慮しても尚、自分の位置に疑問を持ったルーシャ。というのも、彼女よりチャンスが多くある受験生の中で、一人納得しがたい人物がいたからである。

「それって納得できないな、もっと詳しく点数のつけ方とか教えてよ」

不満そうにそう発言したのはキルア。彼の表の位置はその実力の割りにはかなり上の方である。対して、ルーシャも気になっていた―――ゴン。
彼は一番下、つまり評価は受験生の中でトップクラスだ。
少し渋りながらも、ネテロは大まかに評価基準を説明した。
審査基準は大きく三つ。
身体能力値、精神能力値、そして印象値から成る。
その中で一番重要視されるのは印象値。これは言葉では言い表せない何か――――所謂ハンターの資質評価のことである。それと受験生たちの声を吟味した結果が、このトーナメント表、ということらしい。

「戦い方も単純明快、武器OK反則無し、相手に“まいった”と言わせれば勝ち!ただし相手を死にいたらしめてしまった者は即失格!その時点で残りの者が合格、試験は終了じゃ」

(殺しはなし、か。“まいった”さえ言わなければいいとはいえ、相手が頑固であればあるほどやりにくいな……。全く面倒くさいシステムにしやがってあのジジイ)

ルーシャは何食わぬ顔で髭を撫でているネテロを見つめながら思った。
早速最終試験は始められた。審判の声に第一試合のゴンとハンゾーが前に歩み出る。
両者が対峙し、会場には緊張感が漂った。

「それでは――――初め!!」

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