1/7 「よっみんな!四次試験通過おめでとう」 四次試験開始場所。試験終了の放送を聞いて、プレートを6点分集めた受験生たちが続々と戻ってくる。早めに試験開始場所に戻っていたルーシャは、後から来た四人を見つけると合流した。 「ルーシャ、帽子はどうしたのだ?声も元に戻しているようだが……」 彼女の出で立ちを見たクラピカが不思議そうに尋ねた。四次試験開始時に見なかった顔に、周りの受験生の何人かはちらちらと視線を送ってくる。それを感じ、目線をさ迷わせながらルーシャは頭をかいた。 「ああ、もういいんだ別に。それよりさ――」 「おい、ちょっと待て」 彼女の声を遮り話に割って入ったのはレオリオ。彼は魚のように口を開閉し、目を見開いて――――要するにこれ以上ないぐらい驚いていた。 「今、ルーシャっつったか?え、これルーシャなの?」 「あれ?ルーシャの顔ちゃんと見てなかったっけ?レオリオ」 「“これ”って……」 若干落ち込んだようにルーシャは肩を落とす。よく考えてみると飛行船内の時、彼はクラピカに殴られ気絶していた。その為一時的に記憶が飛び、しっかり彼女の顔を覚えていなかったらしい。 「ていうかさ、」 「何だ?」 彼女はレオリオの様子を正面から見た。自分の顔を食い入るように見つめる続ける彼をじとりと睨む。 「そんなに私の素顔が意外なのか」 「まぁ、…………そうだな」 「何だよクラピカその間は」 「大丈夫だよルーシャ!みんなが驚いてるのはルーシャが綺麗だからだよ!!」 「フォローありがとう、ゴン……」 本当にいい子だよこの子……とゴンの優しい言葉を受け取って若干涙ぐむルーシャを余所に、レオリオは背を向けて何やら身なりを整え始めた。その様子に四人は不思議そうにお互いの顔を見合わせる。 くるりと振り返ったレオリオは。 「ルーシャ!今度一緒にお食事でもいかがですか?」 「…………」 「…………」 「…………」 「…………」 その言葉を最後に、その場はなんとも言えない寒い沈黙が漂ったのだった。 □□□□ 場所は変わり飛行船内。 最終試験に残ったのは、ヒソカ、ギタラクルにハンゾー、ポックル、ボドロとルーシャたち五人の計10人。飛行船に乗り込んだ後、ひとまず受験生たちは控室へと向かった。 『えーこれより会長が面談を行います。番号を呼ばれた方は二階の第一応接室までおこし下さい。受験番号44番の方、44番の方おこし下さい』 「面談?」 「何を聞かれるんだ?」 部屋に備え付けられたスピーカーからのアナウンスに少しざわめく控室。そんな中、ルーシャはさっき部屋から出ていったゴンとクラピカが気になっていた。 「どうしたんだルーシャ?」 レオリオが不思議そうに横の彼女を見た後、同じ方向に視線を向ける。その先には二人が出ていった控室の出入口。ああ、と納得したように彼は頷いた。 「あいつ、四次試験中なーんかあったみたいでよ」 聞けばゴンのターゲットはヒソカだったらしく、驚いたことに彼は自力でプレートを奪ったのだという。ならば喜んでいるだろうとルーシャは思ったのだが、見たところ嬉しそうな様子はない。それどころか、何か塞ぎ込んでいるような複雑な表情をしていた。 (ヒソカと何かあったのか……?) 悶々と考えている内にルーシャの受験番号が放送で呼ばれた。立ち上がり応接室へ向かうところで、誰かに声をかけられた彼女はゆっくりと振り向いた。 「ルーシャ、今から面談?」 「ん?ああ、ゴンか」 振り返った先にいたのはゴン。先程より表情は晴れやかだ。後ろをちらと見ると、控室に入っていくクラピカが見えた。彼と何を話したのかは知らないが、自分の中で一応気持ちは収まったのだろう。 (もう心配しないで良さそうだな) 「面談、頑張ってね!」 「最終試験でもないんだしそこまで気を張る必要ないって。でもありがとな」 軽く言葉を交わして、ルーシャは応接室へと向かう。ノックし、一言言って扉を開けた。すぐに座布団に座るネテロと、後ろにかかっている“心”とかかれた掛け軸が目に飛び込む。 おお、きたきた、とこちらを見るネテロに、ルーシャは軽く一礼した。 「まぁとりあえず座りなされ」 「はい――――師匠」 [前] | [次] 戻る |