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「……あ!ハゲじゃん」

「ハンゾーだ!誰がハゲだこのボゲ!!」

そこにいたのはルーシャのターゲットであるハンゾー。昼の太陽に当たり彼の頭頂部は眩しく輝いている。
おお、太陽が二つだ、などと反射してくる光に目を細めながら、ルーシャはこちらを見上げてくる彼を見た。
既にプレートは6点分集めているため、特にハンゾーに興味はなかったが、暇つぶしにはちょうどいいだろう。そう考えて彼女は木の上から一気に飛び降りた。

「てかお前、受験生……だよな?」

「こんなやついたっけ?って顔だな。ずっとゴンたちと一緒にいた黒ずくめだよ」

「あぁ、あいつらと……。……は?」

この後、正体を信じようとしないハンゾーを説得するまでルーシャはかなりの時間を要した。

「――――っと、ようやく話が纏まった所で、だ。プレートをよこしな」

なんとか信じてもらえたあと、ハンゾーは本題に入る。途端に緊張状態に入った彼に対し、だらりと構えもせずルーシャはあっさりと応えた。

「あ、じゃあ好きなのどうぞー」

「は?」

「プレート一枚余ったからやるよ」

「いやいいのか!?お前6点分……」

「もう集まった。ターゲットはお前だったんだけど、ちょうど三人受験生見つけて奪った」

しかしその言葉はハンゾーを余計警戒させてしまったようで、ますます用心深く態勢を崩そうとしない。それにルーシャは軽く肩を竦め、彼を他所に鞄をがさごそと漁る。二日間で奪ったプレートを4枚取り出して、右手でトランプを持つように並べてそれらを差し出した。

「んな警戒すんなよ。この4枚の中から好きなの選ばしてやっからさ」

「そんなこと言われて警戒を解く奴が…………あああああ!!!」

「うわっうるせえ!何だよいきなり」

「それ!197番!俺のターゲットなんだよ!!!」

ハンゾーが大声と共に指を差した197のプレート。ルーシャはそれを左手で抜き取ろうとして、服の裾から覗いた包帯が見えて手を引っ込めた。

(忘れてた……)

「怪我か?」

「ああ、ちょっとな。えっと、これだよな?空から飛んできたんだけど」

「そうなんだよ!キルアのやつが投げ飛ばしやがったんだ!!」

それからルーシャはハンゾーにことのあらましを聞くこととなった。その場に座り込んだ彼は、どうやらすっかり警戒が解けたようだ。
聞くところによると、ハンゾーのターゲットである197番は三兄弟の内の一人だった。その兄弟の末っ子がキルアを尾行しているのを見つけたハンゾーは、そのまま二重尾行したらしい。

「で、三兄弟の相手はキルアにやらせてプレートだけ頂くつもりだった、と」

「そうなんだよ!!それがよ、あいつのターゲットも三兄弟の中の誰かだったらしくて、全員のナンバー確認してから自分のターゲット以外のプレートは投げ飛ばしやがってな?」

「はぁ」

「上手くプレートを手に入れられたと思ったのによー、キャッチしたプレート見たら198だぜ!?信じられるか!?今まで三日間じっと待ってたっつうのにまた最初から探しなおしかよ!!と思った俺は必死にプレートを捜しつつ点数稼ぎをしてたわけだ。そんときだぜお前が現れたのは!」

(いや逆だろ。てかよく喋るなコイツ)

「これで手間が省けたぜ!……ということだからプレートは貰おうか。勿論タダ、なんて都合の良いことは言わねェぜ。譲る気がないなら、強行手段を取らせてもらうが」

「はぁ……じゃあさ、」

「おお……て、え?……は?」

あっさりと渡された197番のプレート。それに拍子抜けしながらもハンゾーはしっかりと受け取った。

「本当にいいのか?」

「その代わり……そうだな、今日一日でいいから一緒に行動しないか?」

「それだけか?」

「ああ。他は別にどうでもいい」

「…………」

「いいじゃん別に。ハゲゾーのプレート奪い返したりはしないって。いやーこれで暇つぶれるわ。どうやって過ごそうか悩んでたけど、これで退屈しなくて済みそう」

「それでかよ……。別に構わねェが、とりあえず言いたい事がある」

「なんだ?」

途端に真剣な表情をしたハンゾーにつられ、ルーシャも顔を引き締める。眉間に皺が寄った彼が発した言葉は。

「俺はハゲゾーじゃなくてハンゾーだ」

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