2/4 四次試験開始から二日目。 「がっ!」 木々が生い茂る森の中。一人の受験生が声を漏らして倒れた。 後ろからの手刀に呆気なく気を失った受験生の鞄の中身を漁る。見つけたプレートを手に、ルーシャはさっさとそこから退散した。 「あっさりとれたな……」 彼が自分のいる地点から見えなくなってから、のんびりと歩き始めたルーシャ。手には先程の受験生のプレートが握られている。 実は四次試験開始二日目にして、彼女の手には既に2点分のプレートが集まっていた。残すところあと1点、行き当たった受験生のプレートを奪えばとりあえず6点分は集まる。 「この調子だとすぐに集まりそう……ま、残りの時間にゆっくりするのもいいか」 奪ったプレートを鞄にしまい、ぶらぶらと足を進め、ルーシャは休む場所を捜す。しばらくして水場が近い所に大きな大木を見つけた彼女は、そこに登って早速昼寝をした。 □□□□ (――――!?うわっ!?) 凄まじい殺気が森を駆け抜ける。無差別に振り撒かれるオーラを感じ、ルーシャは飛び起きて周囲を見渡した。胃の中が震え上がるような気持ちの悪い感覚を感じながら、彼女は体をさする。 (何だ今の殺気!?すごく近かったぞここから!!早いとこ離れよう!) 不吉な予感がしたルーシャは急いで荷物をまとめて担ぎ、立ち上がった。先程の殺気の主がここに来ない内に……そう考えながら木から降り立とうとした時、不意に突き刺さった気配。 素早くそちらに目を向けるも、既に遅し。 「!……ぐっ!!」 左からの強烈な衝撃を受け、ルーシャは木の上から吹っ飛び近くの川へと落ちた。 高い水柱と大きな水音が立つ。蹴り飛ばした彼女を全速力に近い速さで追うのは――――ヒソカ。 「やべ、手首が……」 一方川から急いで顔を出して立ち上がり、臨戦態勢をとったルーシャ。蹴りをモロに受けた左手首は力が入らず、ぶらぶらと力なく揺れてしまっている。 多少打ち身はしたが、少々深めの川だったため、着水の際に底に身体をぶつけることはなかった。 自分の状況を素早く把握して、彼女は目の前の敵を睨み付ける。 「ヒソカか……」 目前に迫ってくる拳をかわし、彼女は呟いた。ヒソカの目は完璧に据わっており、いつも以上に殺気立っている。 (何でこんな興奮してんだよコイツ!!) などと心中で悪態をついていると、不意に頬に熱い感覚。考え事をしている場合ではないようだ。 頬に赤い筋が一線刻まれたと同時に、彼女は川の中へと身を隠す。 一瞬ヒソカが隙を見せたその内に背後の水中から飛び出し、その背中を蹴り飛ばした。 「逃げるが勝ちィ!!」 ヒソカが空中に浮いている間に、凄まじい速さで荷物をひっつかみ、捨て台詞を残してルーシャは一目散に逃げた。 □□□□ (――――良かった) ゴンは今日二度目の安堵の息を吐いた。 運が無いと言うべきか悪いと言うべきか、彼のターゲットはヒソカだった。ゼビル島に入ってから、なんとかヒソカを探し当てずっと尾行を続けていたゴン。 しかし先程クラピカとレオリオを見つけてから、ヒソカは急に殺気立ち始めた。 次に誰かに会えば、問答無用で殺しにかかる――――そう思ったゴンは周りを見回しながら走った。その時見つけたのがルーシャだった。 ゴンが彼女を見つけたとき、既にヒソカは動いていた。右足で蹴りを放つヒソカを見たとき、ゴンは助けに行こうとした足を止めた。もう間に合わないかもしれない、脳裏をよぎるそんな考え。 その一瞬の躊躇いの内に、目の前の二人の攻防戦が始まった。 (は、速い………) もし彼女が攻撃されたら助けるつもりだったが、二人が速すぎてゴンは目でも追うことが出来なかった。 「逃げるが勝ちィ!!」 その声と同時に、彼女はゴンとヒソカの前からかき消えた。既に気配がしないことから、今からヒソカがルーシャを追うのは無理だろう。 「ククク……◇」 ヒソカは今の攻防戦で更に興奮したのか、目の端をピクピクと動かしながら次の獲物を捜し出した。 (あ、追わなきゃ!!) ゴンは一撃をくらったルーシャを心配しながらも、ヒソカの尾行を再開した。 [前] | [次] 戻る |