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「…………あのー」

『何だ?こちらは色々と忙しいのだが』

「かれこれ65、6時間ほど誰も来ないんですけどー」

『そうだな、あと3、4時間ほどでタイムアップだな』

「どういうことですか」

『何がだ?』

「ここ受験生通るんじゃないんですか」

『ああ、一組だけな』

「それを先に言えぇぇエエ!!あ痛っ!」

思わず檻に触り、慌てて手を引っ込めたルーシャはそのままの調子で叫ぶ。

「じゃあここを通る予定の受験生が死んでたらもう永遠にここに来ないってことだろうが!!」

『そのときは運の無い自分を恨むんだな』

(コイツ……!)

念さえ使えれば。
ルーシャの頭にはその言葉だけが浮かぶ。
もう残り時間は僅か。流石の彼女もそろそろ焦ってくる。忙しなく檻の中をぐるぐると回る様は試験官の目には酷く滑稽に映った。
しかしその動きが不意にピタリと止まる。ドアの開く音と同時に振り返った先には、50時間をタワー内の一室で過ごし、その後色々なトラップをなんとかクリアしてきた五人組がいた。



□□□□



「ルーシャ!?」

「何!?」

「もうとっくにゴールしてるのかと思ったのになにしてんだよ、ルー姉!!」

数々のトラップをなんとか潜り抜けてきた俺たちの最後の関門は、同じ受験生のルーシャ、とかいうやつが関わっているらしい。
ここが最後だ、と試験官が示したドアを潜って見えたのは、檻の中に閉じ込められた黒いコートの人間。
あいつは確か、試験開始前にキルアと一緒にいた奴だ。下剤入りジュースを渡したもののこのガキが全部飲んでしまったから結局渡せずにいた怪しげな奴。
一次試験からゴンたちと一緒にいたし、コイツらの仲間だろう。全く面倒くさいことになりそうだぜ。
そいつが入った檻と俺たちの間にはぶ厚いガラス製の壁があり、近くには寄れない。黒ずくめの方も俺たちに気づいて直ぐに檻を揺らしたが、直ぐに痛そうに顔を歪め手を離した。

『その檻には高圧電流が流れている。そいつ一人では檻からは出られない。受験番号100番を助けるか?』

そんなもの、助けるだけ無駄だ。受験生が減って逆に都合がいい。だがそう考えているのは俺だけだ。周りの四人はしきりに「ルーシャを解放しろ!」と叫んでいる。向こうも何か喋っているようだが、分厚い壁が音を通さないため此方に声は届いていない。

『ならば条件がある』

スピーカーから聞こえてきた声に、また一悶着ありそうだ、と口角を吊り上げて試験官の提示する条件を待つ。俺の予感は見事に的中した。

『100番の代わりにそこの手枷に二人繋いで○を押せ。そうすれば100番は助かる。しかしコイツを見捨てて行くなら、全員で×を押せ。どうするかは、君たち次第だ』

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