3/6 「いったたた……」 滑り台のような長い長い落とし穴を通って出た先は真っ暗だった。硬い床の感触を肩に感じたルーシャは体を起こして周りを見渡す。 数秒して眼が慣れた彼女は、一言。 「どういうことだってばよ……」 行き着いた先は、檻の中だった。 『まさかその落とし穴にはまるとはな。だがそこに着いてしまった以上、自分一人ではそこから出られまい』 「んだと……!こんな檻―――痛っ!」 『無闇に触らない方が良いぞ。檻には高圧電流を流している』 「チッ……!」 (ちっくしょーキルアみたいに訓練しておけばこんなの折り曲げてどうにでもなるのに……!) 流石のルーシャも、暗殺一家のように高圧電流に耐える訓練などはしていない。因みに毒は、ゾルディック家を訪れる度に出される食事によって順調に耐性をつけつつある。最初は一口食べた瞬間にぶっ倒れたが。 なす術もなくなったルーシャは先程通ってきた道を振り返った。 もうすでに出口は塞がっており、元来た道を戻るのも不可能だ。再び舌打ちをして、ルーシャは試験官に向かい抗議の声を上げた。 「おい!こっからどう抜け出せって言うんだよ!!」 『実はそれ、遊び半分で作った落とし穴でね。普通に通っていれば絶対に落ちることは無かったのだよ。受験生が通ることの無い業務用通路なのだから』 「いや何してんだよ!!」 仕事しろ試験官!! 続けて叫びそうになった言葉を飲み込む。壁をぶっ壊してしまった自分に非が全くない訳ではない。反省しているかと言えば否だが、交渉次第で出してもらえる可能性はある。淡い期待を抱きながらルーシャは怒鳴りたい気持ちを抑えつつ口を開いた。 「で?どうやったら出してもらえるんだ?」 『ふむ、そうだな……ではこれから来る受験生に助けてもらうというのはどうだ?』 「どうって……助けるも助けないも、これ出入口ないじゃん。そっちで開けてもらう限りはどうしようも無いんだけど」 『何、こちらが指定する条件を受験生が呑めば、君を解放する、という方法なら問題ないだろう?』 あくまで主導権は試験官側、ということらしい。楽しそうな声に若干苛立ったルーシャだが、彼女にはどうにも出来ない為、試験官の言う通りにするしかなかった。 『囚われのお姫様を助けてくれる王子は果たして現れてくれるかね?』 愉快そうに笑った試験官の声を流し、そうなればとにかく昼寝だ、と床に転がったルーシャは目を閉じて意識を手放した。 [前] | [次] 戻る |