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「受験番号100番!お前は今からここで囚人100人と闘ってもらう!!」

梯子から見えた暗い地面に飛び降りた直後、松明の火が広い空間をぼう、と照らした。
そこは闘技場のようなリングの上だった。前方と後方に一つずつ通路があり、本来はそこからここに足を踏み入れるようになっているらしい。
そのリングは広い空間の中央に位置し、タワーの壁から孤立していた。自力でここから出るにはリングから離れているタワーの通路まで飛び越えなければならない。

リングの上にいたのは、筋骨隆々な者から小柄な者まで様々な体格の100人の囚人たち。皆一様にフードを被っており、久しぶりの獲物だ、などと口々に言いながらルーシャを見て薄く笑っている。

「闘うって具体的には?」

彼女のその質問に、囚人の中から代表として一人の男が歩み出て答えた。

「どちらかが立ち上がれなくなった段階で勝敗が決定する。最も、命の保証はないしギブアップも相手が認めたときだけだがな」

一人で100人の、しかも手練れの囚人たちを揃えた自分たちを切り抜けられるはずがないとでも思っているのだろう。選んだ道が悪かったな、と他の者と同じように勝ち誇ったような顔で彼はルーシャを見つめた。彼らの目は格好の獲物を見つけた獣のようにぎらぎらとしていたが、そんなことは意に介さず彼女は臨戦態勢をとる。

「うん、分かりやすいな。んじゃ来い」

「どいつからだ?」

「んー面倒くさいし全員で」

「は?」

「一人ずつやってたら時間もったいないだろ?」

沈黙。そして、

「ふ…ふざけてんのかてめえェェェェーーー!!!」

彼らはルーシャの言う通り一斉にかかってきた。
時間にして三分。

「ほい終わり。」

『……おめでとう。先へ進んでくれ』

死屍累々の囚人達のなかで傷一つ負わずに立っていたのはルーシャだけだった。



□□□□



「あー!誰も来ねェじゃあねぇか!!」

その頃。
ゴンたち四人は多数決の道の入口で、最後の一人を待っていた。既に部屋に降りてから1、2時間は経過しただろうか、レオリオはたまらず苛々と声を上げる。

「今頃ルーシャどうしてるかなぁ……」

「そうだぜゴン!あいつがこっちに来てりゃあもう先に進めたのによー!!」

「レオリオ騒ぐな。喧しい」

クラピカが制してようやくレオリオは口を閉じ、その場に沈黙が降りる。しかし狭い空間の中で何もせずじっとしているのはやはり我慢できなかったのか、僅か数秒でレオリオは痺れを切らした。

「ルーシャのやつはどこまでいってるんだろうな……」

「ルー姉のことだからだいぶ先まで行ってるんじゃねーの?」



□□□□



「……」

『残念だったな。行き止まりだ。先程の分岐点まで戻ってやり直しだ』

ちょうどその頃のルーシャ。
囚人を倒した後彼女はひたすら道を進んだのだが、

「さっきから行き止まりばっか……」

次に待ち受けていたのはこのトリックタワーで一番長い迷路。この迷路を突破すれば三次試験終了は間近らしいのだが、流石試験とだけあってかなかなかに難しく、ルーシャはすっかり迷っていた。

「片手を壁につけて、ってのは定番だけど面倒くさいしな……」

『因みにその方法だと永遠に下にはたどり着けないぞ。一定間隔で迷路の道は変化しているからな』

「おい!!それダメだろ!!迷路で一番やっちゃいけないだろ!!」

『普通の迷路を期待していたのか?これはハンター試験だ』

チッ……と苛立たしげに舌打ちしたルーシャは立ち止まりしばし考えた。先程別れた分岐点まではここからかなり戻らなければならない。

「あーもう面倒くせぇ!!」

『!?』

その声と共に、試験官の見ているモニターから凄まじい破壊音が響いた。土煙が晴れて見えた画面には、さっきはなかった壁の穴がはっきりと映っていた。

「向こうがその気ならこっちもやってやるっつの」

(バ……バカな!念も使わずに……)

試験官室で、三次試験官のリッポーは驚きに固まる。
驚愕する彼を余所に壁を破壊した足を下ろしたルーシャは、そのまま真っ直ぐ進むべく足を踏み出した。
しかし、その先は。

ガコン。

「え、えええええ!?」

運の悪いことにこのトリックタワーに唯一存在する落とし穴だった。

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