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正午。
ギギギギ――と重い音を立てながら、建物の扉がゆっくりと開いていく。受験生たちはどんな試験が待ち受けているのかと、息を飲んで扉の中を凝視した。

「どお?お腹は大分すいてきた?ブハラ」

「聞いてのとおり、もーペコペコだよ。メンチ」

中から現れたのは、かなりの大男と、すらりとした肢体をもつ女だった。
美女と野獣のような組み合わせが現れるとは予想だにしていなかった受験生たちは少々困惑する。そしてそれ以上に、

さっきの唸り声みたいなのは腹の音だったのか!!

彼らの大多数は唸り声の正体に驚愕した。そんな受験生には構わず、大男にメンチと呼ばれたその女は、彼らに向かって告げる。

「そんなわけで、二次試験は料理よ!美食ハンターのあたし達二人を満足させる食事を用意してちょうだい!」

受験生たちは予想外の試験にまたもざわめく。
まず、男――ブハラが出す課題の料理を作り、そこで合格した者がメンチの課題の料理を作る事が出来る。合格基準は双方に『美味しい』と言わせること。
二人が満腹になった時点で二次試験は終了だそうだ。

「うーん、またつまらなそうな試験だな◇」

「!」

「特に拘束しておく必要もなくなったよ。じゃあまた後でね、ルーシャ◆」

(よっしゃ解放されたああぁぁ!!!)

念が外れたのを確認したルーシャは、猛ダッシュで彼から離れる。後ろからヒソカの視線が痛いほど向けられているが、そんなことが気にならないほどルーシャは彼から遠ざかる事に必死だった。
そんな彼女を余所に、まずはブハラの課題が発表された。

「俺のメニューは…豚の丸焼き!俺の大好物」

料理の材料はこの森林公園の中で採れる食材を使用するということで、豚の丸焼きに使う豚を探さなければならなかった。受験生たちは各々食材を探しに散っていく。

「まさか二次試験が料理なんてな」

「確かに予想外ではあったが」

レオリオとクラピカは同じ方向に走り、豚を探しつつ言葉を交わした。周りの受験者を見た所、早くも豚を捕まえ焼き始めている。
自分たちもと、急いで木々の間から動くものを探していたクラピカが、こちらに猛スピードで突っ込んでくる影を見つけ、身構えた。

「レオリオ!来るぞ!」

「!ああ!」

遠く影しか見えないが、かなりの大物だ。豚三頭分はある巨体の下には、何故だか人間の足が生えているように見える。……いや、間違いなく人間の足だ。

「…………あ」

「…………ぅゎぁぁあああ!!!クラピカレオリオぉぉぉぉ!!」

向かってくる者の正体が分かった彼らは一瞬驚いて顔を見合わせ、それから気が抜けたように柔らかく笑って“彼女”を出迎えた。



□□□□



「うっ、うぅ……気持ち悪かったぁぁ〜〜!!」

「オメエ大丈夫か?」

「もうやだアイツには絶対に近寄りたくない……視界に入れたくない」

「だろうな……。見たところ外傷はないようだが、痛い所はないか?」

「心配したんだからな!ヒソカの奴に捕まってるの見て!」

「悪い……心配かけて」

(ふーん……ヒソカに会って殺されてないってことは、クラピカも一応“合格”だったんだな)

口から出る言葉とは全く正反対のことを考えながら、ルーシャは笑顔を浮かべてしとめた二頭のグレイトスタンプを彼らに差し出す。群れに突っ込んで大雑把に捕らえたため、数頭余分に仕留めてしまったのだ。
喜ぶ二人ににこにこと人のいい笑みを向けた彼女の目には、なんの感情も映っていなかった。

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