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「…………」

「…………」

「…………」

「なんか喋れよ」

「驚いた◇美人じゃないか」

「お褒めの言葉どうも」

チッ、と舌打ちをしてルーシャはそう返した。
帽子の中にしまっていた長い髪が風で大きくなびく。それを動けない彼女の代わりに手ですきながら、ヒソカはまじまじと目の前の顔を覗き込んだ。

凛とした涼やかな美女。一言で彼女の容姿を表現するならこうだろう。少しつり目がちの深い碧色の瞳に意志の強そうな眉。全体的に色素が薄いのか、肌が白く、髪も白金に近い金髪だった。
ただし、あくまでこれは外見だけの描写である。今の彼女の表情は、どこぞのヤンキーのような柄の悪い形相だった。
もとが美人なだけに、より迫力がある。

「そんな顔するなよ◆せっかくの美人が台無しだよ?」

「誰のせいだよ誰の」

「そんなに顔を見られるのが嫌だったのかい?確かに女の子だとハンター試験では目立つかもしれないけど」

「もういいからコレ外せよ。なんか巻き付いてるやつ」

「やっぱり見えるんだね」

「あーもうどっちでもいいよ、想像におまかせするから」

命の危機にさらされているにもかかわらずルーシャはかなり自暴自棄になっていた。よっぽど顔を見られたのがショックだったらしい。

「そういえば、その担いでるやつ誰だ?」

気を取り直したのか諦めたのか、彼女は話を変えてヒソカの肩に担がれている人物に視線を向けた。長身の男だと見受けられるが、顔が見えないため誰なのかは判断できない。

「分からないのかい?」

「……あ!レオリオ!?ってうわぁー痛そう」

言うと同時にヒソカが後ろを向いたことにより、担がれている男の顔――レオリオが見えた。一瞬見ただけでも分かる頬の腫れが痛々しく、ルーシャは顔を歪めてその傷を眺める。
実際は少々状況が違っていたが、恐らくヒソカに捕まった時に抵抗したのだろう、と彼女は見当をつけた。

「ん?あれ……あんだけ受験生切り刻んでたのに……なんでレオリオは殺してないんだ?」

「彼は合格だからさ◆もちろんキミもね」

「はぁ……?」

その言葉に、「試験官ごっこ」と称していた彼の声が脳裏に蘇る。てっきりただ人殺しがしたいだけだと思っていたルーシャは、意外そうにへぇ、と呟いた。

「ちゃんと受験生を見定めてたんだな」

「ああ◆青い果実を自分からもぎ取ってしまうなんて勿体無いじゃないか◇」

「はい?」

「あぁ……今回はいいのを見つけたよ。これだから果実狩りは楽しい◇彼がたっぷり熟した所を想像するだけで……あぁあぁぁ◆」


ぞわああぁぁぁぁ。

なんとも言い難い寒気がルーシャの背筋を襲うのが分かる。

(変態だ!こいつは変態だ!!)

凄まじい危険信号がルーシャの頭の中に鳴り響いたが、時既に遅しというべきか、彼女は今更逃げることなど出来なかった。

「さてと◇そろそろ行こうか」

「っ!?うおぁっ!!」

「女の子なのにそんな声出ししちゃダメだよ?」

「お前が引っ張ってるからだろうが!!両腕動かねェし!」

「頑張ってついてきてね◆」

「この野郎ど畜生ぉぉぉぉ!!」

「言葉遣いが汚いよ?ルーシャ◇」

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